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第十一話 花言葉(番外編) ページ23

あの丘で泣いた日から二、三日が過ぎた。
弱音はもう吐かない、泣かない。決意して私は日々を過ごしている。
短い髪は風が抜ける道となって、靡いている。
藍色に変わった髪を此の村の皆は褒めてくれた。” 綺麗だ、素敵だ ”と。
しかし、リムルさんとベニマル、ソウエイはただただ無言で私のことを抱きしめていた。
まるで私の心の変化を悟るように。

そこから、三人には顔を合わすのが少し気まずいなと思ってしまう。
だから、今日は豚頭魔王(オークディザスター)となったゲルドに会いに行くのだ。
正確にはゲルドに呼ばれたのだが。

「ゲルド、どうしたの?貴方から呼ぶなんて何かあったの。」

ゲルドとの集合場所はあの丘だった。ジュラの大森林が目の前に広がっているあの場所。
私が到着するや否や彼は私の目の前で跪いた。前の時と同じような光景。
ただひとつ違うことは彼が顔を上げ、晴々しい笑顔でいることだ。

「A様、私は貴女に伝えなければならない事と渡すものが在るのです。」

伝えることが在るということは理解っていた、ゲルドの顔を見ればなんとなく理解できる。
しかし、渡すものがあるとはどういうことだろうか。一瞬だけ考えていたが、考えることはやめた。
彼の素直な気持を受け取ろうと思ったからだ。

「A様、貴女には私共の生きる意味を教えていただきました。豚頭族は貴女のことを、
慕っております。貴女様のような透通った方に出会えて嬉しかったのです。真っ直ぐで、
それでいて民の幸せや喜びに寄り添う貴女が。それを貴女に伝えたかった。」

私を射抜くような視線で、言葉を放つゲルドは昔のゲルドではなかった。

「もう王になられたのですね。言ったでしょう、誰しもが幸せになる権利があると。
今、貴男は幸せですか。聞かなくとも理解りますが、貴男の言葉を聞きたい。」

彼はゆっくり目を閉じ、そして下から上に目線を上げる。ゲルドは呟く。

「A様、私は幸せです。このゲルドの名において証明いたしましょう。」

彼は右手にいつの間にか持っていた花を私に手渡す。
その花は白色のカーネーションだった。粉雪のように小さく、美しい花。
彼は花言葉を知っているのかしら。

「ねえ、ゲルド。この花の花言葉は知っているの。」

ゲルドは目を開き、愛おしそうな顔で笑う。

「花の花言葉は_。」



白色のカーネーションの花言葉…私の愛は生きています。



ゲルドの孤独は既に満たされていたのだ。

第十二話 街の再開→←感謝 2019/03/26更新



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朱里(プロフ) - 続けてすみません。第十三話のエレンの名前が〇〇〇になってます。意図的だったらすみません (2021年12月11日 19時) (レス) @page27 id: 1848b8e1d2 (このIDを非表示/違反報告)
朱里(プロフ) - 楽しく読ませていただきました!第四話から出でくる〇〇〇ジンとはどのキャラですか? (2021年12月11日 19時) (レス) @page7 id: 1848b8e1d2 (このIDを非表示/違反報告)
山北(プロフ) - ユトさん» ユト様→ご指摘ありがとうございます。訂正致しましたのでご覧になってまた違和感がありましたらご指摘お願い致します! (2019年4月14日 19時) (レス) id: 79f5829be5 (このIDを非表示/違反報告)
ユト(プロフ) - とても面白いです!あと、ミリムの名前は、ミリム・ナーヴァですので訂正お願いします。 (2019年4月13日 6時) (レス) id: 7c4b452e79 (このIDを非表示/違反報告)
山北(プロフ) - 暇人114514号さん» 暇人114514号様→いつも読んで頂き有難う御座います。名前が同じとは光栄です笑 また、更新していくのでもしよろしければ又宜しく願い致します笑 (2019年4月4日 17時) (レス) id: 760c82b915 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:山北 | 作成日時:2019年3月20日 0時

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