29話 ページ31
帰ってきて玄関に倒れ込むアタシにAがメイク落としシートを出して渡してくれるので、それでメイクを落とす。それで、お風呂はどうしますかって聞かれて、洗浄魔法でやるからいいわ、って以前だったら考えられないことを言うと、そのままひょいと持ち上げられてソファへ身体を置かれる。
お腹減ってないですか何が食べたいですかと聞いてくるからてきとうに答えて、ネクタイを緩めてボタンをいくつか開ける。
ああ、今日もなんとか帰ってこられた。と天井を眺めていると、Aがソファ前のテーブルにリクエストしたものを置いておいてくれるからそれを食べて、動けるようにまで回復したら自室へ戻って洗浄魔法で身体を洗って、最低限のケアだけして、そのまま寝る。覚えなくちゃいけない台本とかがあったら、本来起きなくちゃいけない時間より少しはやめにアラームをセットして。それがここ最近のルーティン。
Aに起きる時間を連絡しなくていいのは少しだけ驚いた。スタジオに居たりイヤホンをしてない限りアラームの音が聞こえるので、鳴ったらコーヒー淹れて持っていきます、と。
耳いいのね、とだけアタシは返した。そして言った通り、アラームが鳴ってアタシがベッドで上体を起こして眠気をどうにかしようとしていると、ちゃんとAがコーヒーを持ってきてくれる。蒸らしとかやらないで淹れてる。下手くそ。と思ったけれど、当然文句は言わない。その分すぐに持ってきてくれたんだから、ありがたいわ。
「あなたは今日も綺麗ですよ」
疲れ切っているのを露わにしながら美味しくないコーヒーを飲んで顔を顰めているアタシに、Aはそれでも嬉しそうにそんなことを言う。
思わず、鼻で笑ってしまった。どこがなのよ、どこが。
そもそもアンタ、綺麗か醜いかの概念も理解できていないで、てきとうなこと言ってるだけなんじゃないの?
なんて、思っても疲れているから声に出ないけれど。
「……」
でも、伝わってしまったみたいで、Aは微笑みを俯かせるから。
あたたかいコーヒーの入ったマグカップであたためた手を、Aの頭の上に置いてやって、残りのコーヒーを飲み干して溜め息を吐いた。
「……ありがとう」
「……」
「それしかないのよ、アンタには」
「……」
「本当よ。最近八つ当たりばかりして手間かけて、本当にごめんなさい」
「あなたのやっていることは八つ当たりではないですし、私はあなたの力に少しでもなれて、幸福です」
「……そう」
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自分(プロフ) - チョコドーナツさん» こちらの作品も読んでいただけてうれしすぎちゃったな……🥰🥰🥰ウレチイウレチイ 泣いてくださってありがとうございましたすぎる……本当にありがたい……😭😭😭🙏 (2022年8月1日 12時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
チョコドーナツ(プロフ) - 共依存……好きすぎます……!!どうしてそんなに言葉選びが上手なんですか……順番変ですけど、感動して泣いちゃいました(´;ω;`) (2022年8月1日 12時) (レス) id: 915577a7d1 (このIDを非表示/違反報告)
特になし(プロフ) - いいさん» お読みいただきコメントもいただきありがとうございます🥰🥰🥰ウレチイ……!!精一杯お互いを幸福にしようと頑張った…… (2022年4月13日 21時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
いい - 2人だけの世界で終わらせれたのが泣けました…最初から最後まで二人だけの世界だったんだね… (2022年4月13日 21時) (レス) @page40 id: 03be76b48c (このIDを非表示/違反報告)
特になし(プロフ) - 充さん» こちらこそ読んでくださって、人のために涙を流してくださって、その上それを私に伝えてくださって本当にありがとうございます🥰🥰🥰すごく嬉しい (2022年3月29日 5時) (レス) @page48 id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
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