検索窓
今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:17,221 hit

25話 ページ27

リビングへ戻ると、Aは冷蔵庫を探っていた。何か持ってくるつもりなのだろうと知らない女優と俳優の熱烈な、しかしどこか不自然なキスを眺めていると、Aはぶどうを持ってソファへ戻ってきた。


「シャインマスカット、貰っちゃったんです。すっごいおいしい。ヴィルさんもどうぞ」

「……いただくわ」


普段なら食べない時間だけれど、一つくらいならいいかしら、果物だし。と口へ運ぶと、思いの外それが美味しいものだから目を見開いた。

すると美味しかった反応だったのに気付いたAが嬉しそうに。


「レコード会社の社員だけナイショで貰ってたのを見ちゃったので、社員の謝意マスカット……」

「……は?え?もう一回言って頂戴。よく聞こえなかったわ」

「ご、ごめんなさい……なんにも言ってないです」


恥ずかしいのかなにかを堪えている様子のA。

ばかな子。本当にばかな子。ああ、アタシったらなんでまた泣きそうになってるの。泣くほど酷かったのね、今のジョーク。

上を向いて、呆れているフリを装って涙が溢れる前に止めて、ぶどうをもう一粒だけ口へ運ぶ。


「……おいしいわね。社員の謝意マスカット」

「やー!……何も言ってなかったことにしますかっと」

「ふふ」


最高にくだらないし何も面白くないのに、思わず笑ってしまって悔しい。Aを見やると、いつものあのどこか誇らしげな表情に、してやったりという感情を混ぜたAが居て。

思わず首を掴んで頭頂部へ手のひらをぐりぐり押し付けてやった。Aがアタシの手の中で、けらけら笑いながら謝罪している。

こんなにかわいい子、どうしたらいいのかしら。本当にかわいくて仕方ないのよ。






「……はやく家に帰りたい」

「……Aと上手く行っているみたいで何よりだけれど」

「あ、……今の口に出てたかしら。出てなかったわよね?」

「ええ。何も聞こえなかったわ」


アデラは微笑んで、頷く。わかってるじゃないのと首を竦めて、次の現場のことへ思考を移した。

26話→←24話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (122 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
57人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

自分(プロフ) - チョコドーナツさん» こちらの作品も読んでいただけてうれしすぎちゃったな……🥰🥰🥰ウレチイウレチイ 泣いてくださってありがとうございましたすぎる……本当にありがたい……😭😭😭🙏 (2022年8月1日 12時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
チョコドーナツ(プロフ) - 共依存……好きすぎます……!!どうしてそんなに言葉選びが上手なんですか……順番変ですけど、感動して泣いちゃいました(´;ω;`) (2022年8月1日 12時) (レス) id: 915577a7d1 (このIDを非表示/違反報告)
特になし(プロフ) - いいさん» お読みいただきコメントもいただきありがとうございます🥰🥰🥰ウレチイ……!!精一杯お互いを幸福にしようと頑張った…… (2022年4月13日 21時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
いい - 2人だけの世界で終わらせれたのが泣けました…最初から最後まで二人だけの世界だったんだね… (2022年4月13日 21時) (レス) @page40 id: 03be76b48c (このIDを非表示/違反報告)
特になし(プロフ) - 充さん» こちらこそ読んでくださって、人のために涙を流してくださって、その上それを私に伝えてくださって本当にありがとうございます🥰🥰🥰すごく嬉しい (2022年3月29日 5時) (レス) @page48 id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:わたし | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年2月23日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。