25話 ページ27
リビングへ戻ると、Aは冷蔵庫を探っていた。何か持ってくるつもりなのだろうと知らない女優と俳優の熱烈な、しかしどこか不自然なキスを眺めていると、Aはぶどうを持ってソファへ戻ってきた。
「シャインマスカット、貰っちゃったんです。すっごいおいしい。ヴィルさんもどうぞ」
「……いただくわ」
普段なら食べない時間だけれど、一つくらいならいいかしら、果物だし。と口へ運ぶと、思いの外それが美味しいものだから目を見開いた。
すると美味しかった反応だったのに気付いたAが嬉しそうに。
「レコード会社の社員だけナイショで貰ってたのを見ちゃったので、社員の謝意マスカット……」
「……は?え?もう一回言って頂戴。よく聞こえなかったわ」
「ご、ごめんなさい……なんにも言ってないです」
恥ずかしいのかなにかを堪えている様子のA。
ばかな子。本当にばかな子。ああ、アタシったらなんでまた泣きそうになってるの。泣くほど酷かったのね、今のジョーク。
上を向いて、呆れているフリを装って涙が溢れる前に止めて、ぶどうをもう一粒だけ口へ運ぶ。
「……おいしいわね。社員の謝意マスカット」
「やー!……何も言ってなかったことにしますかっと」
「ふふ」
最高にくだらないし何も面白くないのに、思わず笑ってしまって悔しい。Aを見やると、いつものあのどこか誇らしげな表情に、してやったりという感情を混ぜたAが居て。
思わず首を掴んで頭頂部へ手のひらをぐりぐり押し付けてやった。Aがアタシの手の中で、けらけら笑いながら謝罪している。
こんなにかわいい子、どうしたらいいのかしら。本当にかわいくて仕方ないのよ。
「……はやく家に帰りたい」
「……Aと上手く行っているみたいで何よりだけれど」
「あ、……今の口に出てたかしら。出てなかったわよね?」
「ええ。何も聞こえなかったわ」
アデラは微笑んで、頷く。わかってるじゃないのと首を竦めて、次の現場のことへ思考を移した。
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自分(プロフ) - チョコドーナツさん» こちらの作品も読んでいただけてうれしすぎちゃったな……🥰🥰🥰ウレチイウレチイ 泣いてくださってありがとうございましたすぎる……本当にありがたい……😭😭😭🙏 (2022年8月1日 12時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
チョコドーナツ(プロフ) - 共依存……好きすぎます……!!どうしてそんなに言葉選びが上手なんですか……順番変ですけど、感動して泣いちゃいました(´;ω;`) (2022年8月1日 12時) (レス) id: 915577a7d1 (このIDを非表示/違反報告)
特になし(プロフ) - いいさん» お読みいただきコメントもいただきありがとうございます🥰🥰🥰ウレチイ……!!精一杯お互いを幸福にしようと頑張った…… (2022年4月13日 21時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
いい - 2人だけの世界で終わらせれたのが泣けました…最初から最後まで二人だけの世界だったんだね… (2022年4月13日 21時) (レス) @page40 id: 03be76b48c (このIDを非表示/違反報告)
特になし(プロフ) - 充さん» こちらこそ読んでくださって、人のために涙を流してくださって、その上それを私に伝えてくださって本当にありがとうございます🥰🥰🥰すごく嬉しい (2022年3月29日 5時) (レス) @page48 id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
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