少女と少年 珠城 ページ25
「ん、あ・・・ぅん?」
ぼうっと、意識が覚醒する。照らす太陽に僅かな恨みを抱きながら板張りの天井を眺める。
「・・・」
鼻を掠める、畳の匂い。
微睡の中の思考が、のろのろと働き始める。
ど、こだ、此処?
自覚してからは早い。
敢えて飛び起きたりはせず慎重に努め観察を行う。
天井といい畳といい、光を通す障子といい、純日本的な屋敷だろうか。
穏やかで趣きが存在する中々趣味のいい部屋だとは思うが、残念ながら全く落ち着けない。
「あの、女・・・」
押し殺した声を吐きながら爪を掌に食い込ませる。
心当たりなど、あれしかない。
誘拐?
なら目的は人身売買か、金銭か。
何方と問われれば前者の可能性の方が高いが、それは飽く迄一つの可能性。
愉快犯
これがしっくりくるのはあの女の言動故だろう。
ならばここは異世界か?
そんな馬鹿な、と鼻で笑えるほどの自信はない。
現にこんな場所見たことないし、心成しか不思議な「音」がする。不快感自体はないものの、記憶の中では初めて聞く音だ。
謎が謎を呼ぶとはこのことかと、そっと息を抜く。
ふと、人の気配。
未だ起きていない振りをして情報を入手するのが優先、か。
木と木の擦れる音がする前にそっと瞼を落とす。
「あれ、まだ起きていないみたいですね」
少女特有の高いソプラノ。
あの女とは、違う、か。案の定騙せたようなので続行して聞きに入る。
「全く、とんだ少年です。家の庭でぐっすり寝ているんですから驚きましたね。幽々子様のご厚意がなければ追い出されて死霊に貪られる運命でした」
話しかけるような口ぶりだが気づいてはいない。証拠に、えい、と可愛らしい声をだしながら俺の頬をつついてくるし。
男としてのプライドはない。もう諦めた。
それにしても、幽々子様、というのは恐らくこの屋敷の主だろう。
ともすればおの少女は使用人。奇妙な年齢で働くものだ。
庭でぐっすり、あの女の仕業か。よりにもよって人様の庭に転がすなんて相当頭がとち狂っているらしい。
死霊云々については気にしないことにした。
「紫の企み事に巻き込まれたんですかね?外来人まで誘い込んで、一体何をする心算でしょうか」
確定はできないが、紫というのかあの女。何かしら企んでいる様子は伺えなかったが、腹にどす黒いものを飼っているであろうことは安易に想像できる。
さて、頃合いか。
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彼岸花_毒 - 更新しました。 (2019年7月16日 1時) (レス) id: ed1de518a2 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸花_毒 - 臼井咲さんありがとうございます! 更新します (2019年7月15日 23時) (レス) id: ed1de518a2 (このIDを非表示/違反報告)
サナティ(プロフ) - 更新しました! (2019年7月15日 18時) (レス) id: 1a8f9f7b82 (このIDを非表示/違反報告)
サナティ(プロフ) - 更新します。 (2019年7月15日 17時) (レス) id: 1a8f9f7b82 (このIDを非表示/違反報告)
臼井咲(プロフ) - 一応お話しは作りました!後は彼岸花さんができるまで待機です! (2019年7月15日 15時) (レス) id: 505560354e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サナティ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2019年6月16日 17時