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美術室の扉を開けると、そこに先生の姿はなかった。
袋を運び終えたらしい結城さんが、こちらに向かって歩いているところだった。
結城さんは私を見るとハッとした顔をして、片手に持っていたものを後ろに隠す。
私にはそれが見えてしまった。
スマホだ。
「結城さん、それ…」
私の声に、結城さんはばつの悪い顔をすると、
「誰にも言わないで」
と言い置いて、私の横をすり抜けて行ってしまった。
追いかけようかと迷っていると、準備室のドアが開く。
「どうした? 蒼井」
姿を見せた先生がこちらに歩み寄ってくる。
私の2歩くらい手前で止まった。
「あの、えっと…」
結城さんのこと、話した方がいいのかな。
「誰にも言わないで」と言われている手前、どうしても気後れしてしまう。
私の反応を見て先生は何かを察したんだろうか、私の目を見ると、
「大丈夫、蒼井は気にしてなくていい」
と言ってくれた。
先生は、結城さんがスマホを持っているのを知ってるのかな。
知ってるんだろうな。
「それで、蒼井は何をしに来たんだ?」
「…先生に、聞きたいことがあって」
本当は、先生と2人で話がしたかったっていうのもあるんだけど。
私は言いながら、先生の眼鏡を見ていた。
今は、ちゃんと掛かってる。
「どうしてさっき、目が合った時、笑ったんですか?」
「…え?」
先生は驚いたように目を見開いて、そのあと小さく吹き出した。
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理音(プロフ) - 続き気になります!更新楽しみにしています!応援してます!! (2022年8月16日 0時) (レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
7star(プロフ) - 初めまして!読み進めるほどドキドキして胸がギュッと締め付けられます。作者様のペースで更新されるのを楽しみに待ってます! (2020年7月15日 21時) (レス) id: f3e580ba40 (このIDを非表示/違反報告)
まろん(プロフ) - 読んでて切なくてきゅんきゅんしてます!何度も何度も読み返してます!更新楽しみにしています!頑張って下さい、応援しています! (2019年6月2日 14時) (レス) id: 2af5865e58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな×りお | 作成日時:2019年5月11日 0時