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「そうやってお兄ちゃんは、とうとう死んでしまいました」
私が話を結ぶと同時に車が止まった。
フロントガラス越しに見える、信号機の赤を見つめる。
「私は最期まで見ていることしかできませんでした。
…私は、何もできなかった」
お兄ちゃんが死んだ後、私は無力な自分を呪った。
自責の念に駆られた。
何もできなかった自分を責めて、責めて、
罪悪感にがんじがらめになった。
毎日泣きじゃくった。
泣いて、泣いて、泣いて。
ある日、ふと思った。
あれ、私、なんで泣いてるんだろう。
なんで、悲しいなんて思うんだろう。
悲しいって思うことに、意味なんてあるのかな。
ないんじゃないかな。
そんなことを、色んな場面で思うようになった。
楽しいって思うことに、意味なんてあるのかな。
苦しいって思うことは？嬉しいって思うことは？
そうやって、私の感情は麻痺していった。
「なあ蒼井」
信号が青に変わった。
車が緩やかに動き出す。
先生は前を向いたまま、私に言った。
「お前がお前を責めるほど、周りはお前を責めていない」
先生は前を見ているはずなのに、正面からしっかりと目を見て語りかけられている気がした。
「何もできなかった、なんて言うなよ」
先生の力強い言葉が、私の耳に届く。
「入院生活って、結構退屈でつまらないものだ。
学生の頃入院していたからよく分かる。
そんな中、毎日のようにお見舞いに来てくれる存在は、かけがえのないものだったはずだ」
先生の言葉が、心に沁みる。
「無力なんかじゃない。
お前は意味のあることをしていたんだ。
ちゃんと、兄の力になっていた」
ぽろ、と目から涙が零れた。
涙を拭うこともせず、私はぽろぽろと静かに泣いていた。
前を見ている先生に、私の涙は見えてないはずだ。
家に着くまでに乾いてしまえればそれでいい。
心に負った痛みが、全部なくなった訳じゃない。
でも、先生の言葉に、私は確かに救われた。
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さな×りお(プロフ) - 緑えいたぁーさん» えぇ…ありがとうございます！ めっちゃ嬉しいです更新頑張ります！ (2019年5月3日 20時) (
レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
緑えいたぁー(プロフ) - さなさんとりおさんの書くお話が大好きです！いつも楽しみにしています！もしかしたら歳近いんじゃないかな〜って思ったりしたりしなかったり…御二人のファンとしてずっーと応援してます！ (2019年5月2日 22時) (レス) id: 847f0c09f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さな×りお | 作成日時：2019年4月24日 22時
