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さくらは私を庇うように前に座り直して、諏訪さんに向き合った。

「諏訪さんもブレてないように見えるけど。
世界のファションショーに出るようなモデルになるって…ごめん、前に喋ってるの聞こえちゃって」

さくらの言葉に、諏訪さんは私達から視線を外した。
その目は迷うように揺れていた。

「分かんない。
そもそも本当に叶えたかったのか…もうよく分かんない。
色んなもの失って、犠牲にして、もうあと戻りできなくなって。
だから前に進むしかなくて!」

苦しそうな、助けを求めるような響きがあった。
その辛そうな顔を見て、私はふっと衝動に駆られた。

何か言わなきゃ。
助けなきゃ。

私が口を開こうとした時、
諏訪さんは我に返ったように、ハッとして目を見開いた。
辛そうな表情を無理矢理消すと、

「…なんであんた達にこんな話」

自嘲的に笑って、私達に本音を打ち明けたことを後悔するようにゆっくりと瞬きをした。

そのまま立ち去ろうとする諏訪さん。

「戻ってもいいんじゃないかな?」

声を掛けたのはさくらだった。
立ち上がって、諏訪さんを励ますように言う。

「無理して進む必要ないと思う。

そうだ。新日の棚橋と柴田の泣ける話があるんだけど、聞く?」

にこっと、得意げな笑みを浮かべるさくら。

「聞かない」

諏訪さんは断って教室を出ていってしまった。
教室に取り残されるさくら。
その後ろ姿は置いてきぼりにされたうさぎみたいで、見ていてちょっと可哀想だった。

「…さくら、私聞こうか?」

さくらはなんとも情けない顔をして私を振り返る。

「ありがとうA」

「いえいえ」

曖昧に笑いながら、さっきの諏訪さんの辛そうな顔を思い出す。

私は諏訪さんに、どんな言葉を掛ければよかったんだろう。

先生だったら、なんて声を掛けたんだろう。

横たわる先生の顔に視線を滑らせる。

私はこの先生に、2度も救われた。

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さな×りお(プロフ) - 緑えいたぁーさん» えぇ…ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです更新頑張ります! (2019年5月3日 20時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
緑えいたぁー(プロフ) - さなさんとりおさんの書くお話が大好きです!いつも楽しみにしています!もしかしたら歳近いんじゃないかな〜って思ったりしたりしなかったり…御二人のファンとしてずっーと応援してます! (2019年5月2日 22時) (レス) id: 847f0c09f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月24日 22時

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