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「大丈夫か」

先生が心配そうに私の顔を覗き込む。

「兄がいたんです」

言ってから、返答になっていないなと気づいた。
それでも言葉は止まらなかった。

「私が中学生の時に死んだんです、癌で」

先生が息を呑む気配があった。

無意識のうちに、記憶に蓋をしていた。
優しくて、大好きなお兄ちゃんだった。

お兄ちゃんを殺した癌は、先生のことをも蝕もうとしている。

「どうして先生まで…嫌だ。
大切な人がいなくなるのは、もう嫌だ」

情けない、子供のわがままじみた言葉が、フローリングの床を滑っていった。

蹲る私を、先生はとても辛そうな顔で見つめた。
そして重い口を開いた。

「蒼井、一旦ベットで休んでなさい」

「でも下校時刻とっくに過ぎて」

「いいから、ほら」

先生は手を差し出してきた。
その手に捕まって立ち上がった瞬間、目眩がした。
よろけて、先生に抱きつく格好になってしまう。

「す、すみません」

慌てて身体を離そうとすると、

ぐ、と逆に抱き寄せられる。

「先生…?」

不思議に思って先生を見上げた。
至近距離で目が合う。

先生はくしゃりと顔を歪ませた。
眉根を寄せ、眼鏡の奥の瞳が辛そうに震える。
病気の痛みでというより、先生の中の想いが表情に滲み出ているようだった。

「先生?」

もう1度呼ぶと、先生はハッとしたように目を見開き、ふいと顔を背けた。

「…まだ1人で歩けないでしょ」

そう言って、私に肩を貸す。
半ば運ばれるように、さっきまで先生が寝ていたベットに入った。

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さな×りお(プロフ) - 緑えいたぁーさん» えぇ…ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです更新頑張ります! (2019年5月3日 20時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
緑えいたぁー(プロフ) - さなさんとりおさんの書くお話が大好きです!いつも楽しみにしています!もしかしたら歳近いんじゃないかな〜って思ったりしたりしなかったり…御二人のファンとしてずっーと応援してます! (2019年5月2日 22時) (レス) id: 847f0c09f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月24日 22時

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