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しばらくして、先生が入ってきた。
私はぺこりと頭を下げる。
「蒼井Aです。デッサンを教わることになってた」
「…ああ、君がか」
柊先生を正面からまともに見るのは、初めてだった。
くしゃくしゃっとした前髪に、丸眼鏡。
美術教師という肩書きがよく似合った。
「画材とか準備するから、そこ座ってて」
先生は手近な椅子を指して、私に背を向けた。言われた通り腰を下ろし、先生がイーゼルに画板やら画用紙やらをセットするのを眺めていた。
何か会話をした方がいいんだろうか。
沈黙を破ったのは、先生の方だった。
「蒼井は、全くの初心者か?」
デッサンのことだろうか。
「はい」
「デッサンについて、勉強したりは?」
「つい数日前までデッサンをやるなんて考えてなかったので…ほとんど何も知らないです。鉛筆画みたいな感じですか?」
「似てるけど、違うな」
先生はこちらに向き直った。
「鉛筆画は、鉛筆で描いた絵のことだ。特にルールはない。思うままに、好きなように描けばいい。でもデッサンは違う。
目の前にあるものを客観的に分析して、紙に写していくんだ。
余計なことはせず、淡々と」
先生は顔を上げ、私と目を合わせた。
「蒼井はそういうの、得意だろ?」
含みのある言い方だった。
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さな×りお(プロフ) - かなとさん» 指摘していただきありがとうございます。訂正いたしました。 (2019年4月1日 18時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年4月1日 16時) (レス) id: 977ff24faa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月1日 15時