水柱と鬼の奮闘記【冨岡義勇】

息の根 ページ15

民家の横にある小屋の前には口から血を流した少女が倒れていた。


｢すいません！どうしたんですか！！」


倒れている少女の肩を小さく揺する。大声で呼びかけても少女は目を覚まさない。少女の着物は襟元を中心に血で赤く染まっている。


少女から離れ家の方へと足を動かす。いつの間にか足は鉛のように重くなっていた。
開け放されている扉の向こうから中を見やる。




ひゅっと息を呑んだ。



がくりと膝から力が抜け座り込む。喉がカラカラに乾いていく。背筋に冷たいものが流れるような感覚に指先が震えた。






天井、床、布団、障子。そこら中に飛び散る鮮血の色。
光の射さない虚ろな目を此方へ向ける面々。
その身体は惨たらしいほど血に濡れていた。

生を宿していないことが確認するまでもなくわかってしまう。




ああ、きっとほんの少し前までは家族団欒を楽しんでいたはずなのに。
明日があることを信じて疑わなかったはずなのに。







鬼だ。と、咄嗟に思う。

こんな惨いことが出来るのは化け物だけだ。


アイツらは人の幸せを当然のように奪う。




最愛の姉を殺された現場が走馬灯のように駆け巡り、頭がぐらぐらと揺れた。吐き気さえ憶える。








違う、今することはそんなことじゃない。


家の前に倒れる少女にはまだ息があった。





急げ。




あの少女だけでも何とかしてやりたい。



家族を失った苦しみは計り知れない。生きることを放棄したくなる。




そうなっても助けてやったらいい。自分がそうして貰ったように。






＿＿＿＿＿お前も繋ぐんだ、義勇。





親友の言葉を思い出し、真っ直ぐに前を向いた。



少女の元へ駆けていく。

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