うちの暴君は『嫉妬深い』だけ【石田三成】

「彼氏」と書いて「暴君」と読む ページ1

束縛、監視、ストーカー、その他諸々……。
そういった人たちは俗に言う“愛が重たい人たち”。

だとしたら世間よ、私の彼氏はその分類に入ってしまうことになる。


大量のメール。
数分おきの電話なんて日常茶飯事。
あとたまに不法侵入。


普通じゃないことは分かってる。
分かってるけど、これだけははっきり言わせて欲しい。


「本当に寝顔と照れた時の破壊力が凄まじいの。可愛すぎるの」

「そんなことより問二の答え教えてくれよ」

「そんなことって……左近が『三成様っていずれ法に触れそう』なんて言うから一応弁解しているんだよ。あと答えなんて教えたら左近のためにならないじゃん」

「こんな時ばっか真面目か！Aは三成様の課題写してるくせに」

「写してない。ちょっと見せてもらってるだけだもん」


白々しいAを横目に、島左近は本来の椅子の使用方法と真逆の座り方をして背もたれにだらしなく腕を置き、後ろの席であるAの机に広げた課題の解答欄をコツコツとペン先で叩いた。


「マジで分かんない。A助けて」

「とりあえず適当に書いとけば？早く終わらないとそろそろ三成が来る」

「私がなんだ？」


気だるそうに告げたAの目の前に、いつの間にか三成が立っていた。


「おかえり。生徒会の集まりは終わった？」

「終わったからこうして迎えに来た。……だが、何故左近といる？私は図書室で待っていろと言ったはずだが？」


嫉妬の念が教室に漂う。
独占欲が強いせいか、ちょっとした男絡みですぐこうなってしまうのだ。
ヤキモチ程度で済まされたらまだ可愛いものだが、見ての通りそうはいかない。


「色々あって左近の補習監督任された」

「知らん。帰るぞ」

「えー」


無理矢理立たされたAは、置いていたバッグを人質に取られて腕を引かれる。


「もう少し待てない？」

「生徒会の招集が終わったあと、貴様を待たせまいと廊下を疾走した。そんな私の気遣いを貴様は踏みにじるのか？」

「私は早く家に帰るよりもう少し学校にいたいなぁ……。まだ三成といたいなぁー」


するとAの腕を引いていた三成の動きがピタリと止まる。


「私といたいのか？」

「いたい。すごく一緒にいたいナー」


ほとんど棒読みだったが、それでも三成は嬉しかったのか「ならばしばらく留まってやろう」と言った。

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