冷静 ページ9
殺伐とした雰囲気が流れる中、秀吉達を出迎えていた家臣らも縁側の方へ目を向ける。
何の騒ぎだろうかとざわめく周囲の中から、神輿に乗る刑部が三成と家康の間に入った。
刑部「やれ、落ち着け三成。太閤の前であるぞ」
三成に刀を収めるよう諫める刑部だが、三成にその気配は全くない。
刑部「太閤の前であるぞ」
あえてその部分を強調すると、やっと冷静さを取り戻したようで。
三成は家康に向けていた刀をゆっくり下ろした。
刑部「徳川殿、親戚であるA殿と積もる話はあるだろうが、しばらく時を置いてくれまいか?」
家康「…そうだな。この間まで敵だった儂が、大事な許嫁であるAに関わっては色々疑われても仕方がない。刑部殿の言う通り、時を置こう」
家康は少し哀しそうな笑みを見せ、踵を返した。
刑部「(徳川は物分かりが良くて助かる。後は…)」
刑部は、刀を下ろしたまま黙っている三成と、その後ろで複雑な表情をするAを交互に見た。
三成は何度かAの方に視線を送り何か言いたげのようだが、Aは全く三成と目を合わせようとせず、しばらくして俯いた。
刑部「A殿、三成は少し疲れておるようでな。部屋で休ませる故、水を一杯もらえぬだろうか?」
A「…承知しました」
刑部の顔を一度見た後、Aはすぐにまた俯き、台所へと逃げるように向かった。
刑部「…さて、主は少し休め。太閤への報告も我が済ませておく」
ここに来てやっと刀を鞘に収めた三成は、「報告は私の役目だ」と縁側から秀吉の元へ足を進めるが、刑部に肩を掴まれその足が停止した。
刑部「主は休んだ方がいい。A殿とゆっくりすれば少しは違うであろうよ」
三成「余計なお節介だ」
刑部に掴まれた手を振り払うと、三成は構わず秀吉の元へと向かった。
*******
「家康様、A様には会えましたか?」
豊臣の従者によって案内された広間に集う家臣の元へ戻って来た家康は、自分の頬をぱんっと両手で叩き、気持ちを切り替えた。
家康「ああ!見違えるほど成長していて一度見ただけでは分からなかった!」
「家康様が左様に元気になられて我らも嬉しゅうございます」
「A様かー、話には聞いているがあの家康様が何十年もお慕い続けている方を皆で一度拝見しとうございますな!」
家康「ははっ、その言い方は止してくれ」
その想いは絶対実らぬと知ったから…。
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三楓(プロフ) - 星砕さん» 返信が遅れて申し訳ございません。最後まで閲覧頂きありがとうございます!主人公にとっては中々残酷な結果となってしまいましたが..( ̄▽ ̄;)こちらこそ楽しんでいただきありがとうございました! (2020年8月15日 23時) (レス) id: 6c61a6d02b (このIDを非表示/違反報告)
星砕(プロフ) - はじめまして。本日一気に読ませていただきました。とても面白かったです!先の読めない展開に終始ドキドキしっぱなしで…………最後のシーンは「あ!そうなる!?」とびっくりしてしまいました笑。素敵な作品をありがとうございました (2020年8月13日 21時) (レス) id: 567175ed17 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - SAKINAさん» コメありがとうございます!最後まで読んでくださりありがとうございました(*´∀`*) (2017年10月30日 10時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
SAKINA - みっちゃんなら遣りかねない物語ですね。ヒロインの生き死に胸を鷲掴されました。読みごたえ十分です、どうもありがとう。 (2017年10月5日 20時) (レス) id: c9c7499e31 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - SCP-114514さん» コメありがとうございます!最後まで読んでくださりありがとうございましたヽ(*´∀`)ノ (2017年9月10日 12時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2017年8月29日 16時