検索窓
今日:14 hit、昨日:1 hit、合計:36,268 hit

配慮 ページ11

突然顔にかかった水。

向けられた空の茶器。


A「みつ、なり…さま?」


拭う物もなく、Aは咄嗟に着物の袖で顔を拭いた。

だが、そのあまりにも突然の出来事に、頭が追い付けていない。

Aにかかった水は、髪や頬を伝い水滴となって何度も畳に落ち、染み込んでいく。


三成「……」


空になった茶器は畳に落ち、ころころと二度転がった。


三成「A…」


顔を拭くAの腕を引き、水に濡れて艶やかさを増した唇を奪った。

触れるだけで済まされた口付けに、Aは濡れた髪のまま、ただ三成を見ることしかできず、何も抵抗しないAを三成はそのまま腕の中に収めた。


三成「…止めてくれ。他の男の話でそんな嬉しそうな顔を…」


再び消えそうな声で呟く三成。

水を顔にかけたのはそういう意味かと悟ったAだが、彼の行動がどうも理解出来なかった。


A「…そのように抱きしめては三成様も濡れますよ」

三成「構わない…」

A「察してください。私は怒っているんです」


Aは三成を押しのけ、水をかけられたことに涙を堪えながら彼を睨んだ。


A「三成様も数十年ぶりにあった人と色々話がしたいと思いませんか?久しぶりに再会すれば嬉しいと思いませんか?それを邪魔されたら…嫌だと思いませんか?」

三成「…」

A「私の事を大事にしてくれるのは嬉しいです、ですが…その辺りの配慮をしてもらえれば…」

三成「…分かった」


やっと分かってくれたとAがほっとしたのも束の間。

三成「つまり貴様は…









私が邪魔、だと?」


三成のその声だけで全身が逆立つような感覚に襲われる。


A「い、いえ…ただもう少し配慮をと…」

三成「家康を慕っているから…私は恋路の邪魔、だと」

A「誰もそのような…!」

三成「やはりか…やはりそうなのだな…。何十年も会っていない家康をあのように気にかけていたのは慕っているからで、私にこう説教するのは私に興味がないから…。私が、貴様の恋路の障害だからか!」


消えかかっていた三成の声は、震えつつも段々と声量を増していった。

証明→←水



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (43 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
45人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

三楓(プロフ) - 星砕さん» 返信が遅れて申し訳ございません。最後まで閲覧頂きありがとうございます!主人公にとっては中々残酷な結果となってしまいましたが..( ̄▽ ̄;)こちらこそ楽しんでいただきありがとうございました! (2020年8月15日 23時) (レス) id: 6c61a6d02b (このIDを非表示/違反報告)
星砕(プロフ) - はじめまして。本日一気に読ませていただきました。とても面白かったです!先の読めない展開に終始ドキドキしっぱなしで…………最後のシーンは「あ!そうなる!?」とびっくりしてしまいました笑。素敵な作品をありがとうございました (2020年8月13日 21時) (レス) id: 567175ed17 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - SAKINAさん» コメありがとうございます!最後まで読んでくださりありがとうございました(*´∀`*) (2017年10月30日 10時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
SAKINA - みっちゃんなら遣りかねない物語ですね。ヒロインの生き死に胸を鷲掴されました。読みごたえ十分です、どうもありがとう。 (2017年10月5日 20時) (レス) id: c9c7499e31 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - SCP-114514さん» コメありがとうございます!最後まで読んでくださりありがとうございましたヽ(*´∀`)ノ (2017年9月10日 12時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:三楓 | 作成日時:2017年8月29日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。