無窮の懺悔【石田三成】弍

荒 ページ2

数か月ぶりの自室。

しかし障子を開いた瞬間、Aは思わず「ひっ！」と叫んだ。

何かを探すように荒らされた自室。

並べられていた書物も畳に落ちているものや破られているものもある。

押入れの襖にも刀傷のようなものがあり、流石に入るのをためらった。

恐らく、叔父が放った間者がここに来てAを探していたのだろう。

今回も三成に助けられたと心の底から思ったAは、恐る恐る部屋に足を踏み入れ、筆だけ取って三成の部屋へと走った。

＊＊＊＊＊＊＊

三成からの文の前半には、先ほど兵が言ったように「徳川は恐らく降伏する」などの戦況を報告するもの、後半部分には「この文が無事Aのところに届いていることを願う」とAを案じた文章が書かれていた。

そして、小さな花が一輪。

その文のお陰なのか、さっきの恐ろしい光景で震え上がっていたAの心は徐々に溶かされていった。


A「とりあえず部屋の事を報告した方が…いや、余計に心配をかけてしまうかも」


文の内容で苦戦するAは、筆先を未だ紙の上に置けないでいた。


A「あ、利休さんがちょっと意地悪な御伽噺をしてくれたってことを…」


いい内容が浮かんだと思った途端、Aは筆をぴたりと止めた。


利休『僕がここに来たことは絶対三成様に言わないでくださいね。一応、三成様にAさんに近づくなと言われているので』


そういえばそう言われていた…と一人で苦笑しながら、Aは別の内容で返事の文を書き留めていた。

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