無窮の懺悔【石田三成】弍

気心知れた仲 ページ16

左近「いくら許嫁でも気まずくなる時はありますって。そう落ち込まないでくださいよAさん」


家康の居る部屋に向かう道中、左近は浮かない顔をするAをなんとか元気づけようと様々な励ましの言葉を送った。


左近「喧嘩するほど仲がいいって言葉もあるし、うん。気にすることないっすよ。何があったか知らねーけど」


苦笑しながらAの方を見るも、彼女の顔色は変わらず。

かける言葉すらも無くなった左近は賽で手遊びをし始めた。

＊＊＊＊＊＊＊

悪運が強いのか、幸い部屋に辿り着くまでに三成と出くわすことはなかった。


左近「失礼すんぜー」


左近が襖を開けると、部屋には家康の他にも彼に仕える家臣たちが鎮座していた。


家康「ん？えっと…島左近殿、だったか？儂に何か？」


家臣たちに囲まれ、何やら囲碁をしていた家康は左近の登場に碁を打つ手を止めた。


左近「俺じゃないっすけど、Aさんがアンタに用があるんだと」


徳川家臣たちの目は一気に左近の後ろにいたAへと注がれた。


「おお！貴方がA様ですか！」

「家康様からお話は聞いておりますぞ！」

「想像以上に可愛らしい方ですなぁ！」


家臣たちが騒ぐ中、「お忍びで来てるから静かにしてくださいよ！」と左近は冷や汗をかきながら注意した。


家康「よく来たなA。儂も丁度お前と話の続きをしたいと思っていたんだ」


家康は相変わらず優しい笑みでAを迎えるが、左近の後ろで怯えたようなAの表情に、何かあったのだとすぐに察したようで。

家康は家臣達にしばらく席を外してくれと頼んだ。

流石、気心知れた仲だと感心せざるおえない。

家康の命を受けた家臣たちは皆部屋から立ち去り、その場に残ったのは家康、左近、そしてAだけになった。


左近「…なんで人払いを？」

家康「その様子じゃ、Aは何か儂に相談しに来たんじゃないか？あまり他人に聞かれたくない事なのかと思って人払いをさせてもらった」


すると今まで左近の後ろにいたAは部屋に足を踏み入れ、家康の元へと歩み寄る。


左近「Aさんに変な事したら承知しねーからな。じゃ、Aさん、約束通り早めに戻ってきてくださいね。俺は稽古してきますから」

A「はい。ありがとうございました…」


Aが左近に頭を下げると、彼は襖を閉め、稽古のために三成を探しに戻った。

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