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私は彼を拒絶しなかった。触れる唇の感触は生温くて、柔らかくて。たまに当たる吐息に身を捩らせながら、私はそれに耐えた。不快な心地は毛程もしなかった。ただ擽ったくて、恥ずかしくて、泣きたくなった。
佐野は何度もそこに吸い付いて、舌でなぞって、最後に上からがぶりと噛み付いた。二重にかさなった痛みに私は微かな悲鳴をあげるが、佐野はやめなかった。彼のシャツに縋り付いて痛みに耐えると、そのまま手を取られてベッドに手の甲を押し付けられた。顔を上げた彼の表情は冷たかった。涙の滲む私の頬に触れて、なぁ、と語りかけてくる。氷のように冷えきった瞳に晒され、私は縁に溜まった涙を吐き出した。
「オレが怖い？」
振り下ろされる冷めた声。そんなふうに尋ねないで欲しい。どうして、怖がらせるように聞くの？私を突き放したいのか、つなぎとめたいのか、どっちなの？
「オマエはオレのモンじゃねえのに、オマエが傷付けられてこんなにイライラしてるオレのこと、怖くねえの。オレ、オマエがこれ以上傷付けられたらオマエのことどっかに閉じ込めちまうかもしんねぇ」
「佐野、……」
「オレはもう、ちょっとおかしいんだ」
だから、と言って手首を掴まれた手の力が強くなる。
「オレの傍にいる気がないなら、オレのモノにならねぇなら、ちょっとでも、オレを怖いと思うなら……オレから逃げてくれ。オレからじゃ、もう、オマエを手放せない」
佐野の顔は、苦しそうな訳でもなく、切羽詰まった様子でもなく、ただただ無表情だった。淡々と零される脅し文句のような言葉に、私は咄嗟に口を開いた。なんの躊躇いもなく、私は「嫌」と答えた。
「ごめん、ずっと待たせて。今、好きって言ってくれた返事するね」
佐野の表情は変わらない。
「私も佐野が好き。付き合うとか、恋人になるとか……あんまり分かんないけど、私は佐野が好き。大好き。怖くないし、逃げないよ。傍に居る……誰かのものになるなら、佐野がいい」
だから……と紡ごうとした唇を塞がれた。佐野の、清潔感のあるシャンプーや石鹸の混じった匂いがした。柔らかいものが唇を貪って、何か湿った塊が口の中に入ってくる。キスをされたのだ、と気が付くのにそう時間はかからなかったけれど、どこを見たらいいか分からなくて目を瞑るのには少し時間を要した。
まだ明るい天井と、佐野の少しパサついた金髪。やがて深い口付けになるのを、息も絶え絶えに受け入れながら、私は暫しの間彼の唇に翻弄され続けた
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泣蜜(プロフ) - あ.....好きです....。未来での夢主ちゃんとマイキーの関係が気になります！毎日更新楽しみにさせてもらってます！ (2021年6月6日 1時) (
レス) id: 9a006c8713 (このIDを非表示/違反報告)
おろし(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます！ (2021年5月26日 17時) (レス) id: 47520b13da (このIDを非表示/違反報告)
柚香(プロフ) - 子@さぶ様の表現力素敵すぎます！マイキーかっこいい、、、続き楽しみにしております！ (2021年5月26日 10時) (レス) id: d9354e6a46 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 更新楽しみです！マイキーの独占欲半端ないかっこよすぎる、、、 (2021年5月25日 17時) (レス) id: 800746c1bf (このIDを非表示/違反報告)
しん(プロフ) - これからの展開にドキドキします...めちゃくちゃ面白くて毎日更新楽しみにしてます！！ (2021年5月25日 1時) (レス) id: cdf270dae3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：子@さぶ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2021年5月17日 0時
