▼ ページ27
佐野の様子は、前と全く変わらなかった。
覚悟しとけよ、なんて意味深なことを言うから有り得ないほど身構えていた私が馬鹿みたいに思えるくらい、前と変わらない様子で話しかけてきたので、ギクシャクしていた私もつられて普通に話すことが出来た。エマちゃんが鋭いのか、私がわかりやすすぎるのか、こちらを不思議そうに見ていたが、やがていつもの調子を取り戻すと彼女の怪訝そうな様子も削がれた。
家族水入らずの場に私なんかが入っていいものかと少し躊躇ったが、なんやかんや一緒にお線香を上げさせてもらい、2人から真一郎さんという人の話を聞いた。
「オマエにはあんまり話したことなかったよな。カッケェ人だったんだよ、弱ェくせに強いやつに喧嘩挑んでさ、そんな兄貴に色んな不良がついてった」
「へぇ……会ってみたかったなぁ。佐野に似てた？」
「目元とかはマイキーと似てたかも？」
あぁでも、と言ってエマちゃんはニッコリ笑った。
「ちょっとだけ、Aさんに似てるかも」
「へっ？私が？」
「うん。なんて言うのかなぁ……大事な何かのために、ぱって前に出ちゃうようなところ？なんか、ちょっとだけ似てるよ」
それってあんまり褒められてない気がする。微妙な顔をする私に、佐野がちらりと視線を寄越して「オマエは誰の墓参り？」と尋ねてきた。
「私は、お母さんの」
「オマエの母ちゃんはどんな人だった？」
「うーん……なんて言ったらいいか……1日で焼酎1本開けて、酒飲みながら接客したり、灰皿で親戚の頭どついたり、食い逃げしようとした客に一升瓶投げつけて警察沙汰になったり……めちゃくちゃな人だったな」
「それ本当にAさんのお母さん！？」
7歳の頃までの記憶しか残っていないというのに、かなりめちゃくちゃな人だった母のエピソードは色々と頭に焼き付いている。5歳の私に水と言って日本酒を飲ませようとして、父ちゃんにゲンコツ食らってた話はしない方がいいかな。
「でもさ、めちゃくちゃな人だったからこそ、もう1回会いたいって思っちゃうんだよね」
「……うん、分かる」
さらさらと、風が頬を撫でている。揺らされた細い金髪の隙間から私を捉えて、佐野は微笑んだ。
「オレも、もう1回会いたい」
そう言った彼の顔があまりにも儚くて、私は少しどきりとした。ときめいたのではない。今にも消えてしまいそうに思って、不安になったのだ。
その顔の陰りに底知れない闇を感じ、私は真一郎さんの死に、何かしらの裏を感じ取った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1957人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
泣蜜(プロフ) - あ.....好きです....。未来での夢主ちゃんとマイキーの関係が気になります！毎日更新楽しみにさせてもらってます！ (2021年6月6日 1時) (
レス) id: 9a006c8713 (このIDを非表示/違反報告)
おろし(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます！ (2021年5月26日 17時) (レス) id: 47520b13da (このIDを非表示/違反報告)
柚香(プロフ) - 子@さぶ様の表現力素敵すぎます！マイキーかっこいい、、、続き楽しみにしております！ (2021年5月26日 10時) (レス) id: d9354e6a46 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 更新楽しみです！マイキーの独占欲半端ないかっこよすぎる、、、 (2021年5月25日 17時) (レス) id: 800746c1bf (このIDを非表示/違反報告)
しん(プロフ) - これからの展開にドキドキします...めちゃくちゃ面白くて毎日更新楽しみにしてます！！ (2021年5月25日 1時) (レス) id: cdf270dae3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：子@さぶ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2021年5月17日 0時
