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「そら、着いたぞ。しのぶさんは任務以外の時大体此処に居るんだ」
私の心中などいざ知らず、炭治郎はとある一室の部屋の前に来ると、その木の戸を二回叩いた。まだ柱と顔を合わせる心の準備すら出来ていないのに、何普通に入ろうとしてるんだ。
「どなたですか?」
扉の向こうからは、凛とした、女性らしい綺麗な声が飛んできた。思わず身が引き締まる。
「竈門炭治郎です!御客人を案内して参りました!」
「まぁ、それはありがとう。どうぞ、お入りくださいな」
優しい声だ。少しも棘がない。なのに、なんだこの緊張感は。鬼の血鬼術をもろにくらって大怪我を負った歳に手当てを受けたことはあるが、面と向かって改めてお話するのは初めてだ。やっぱり、師匠以外の柱の人と話すのは緊張する......
失礼します、と炭治郎との声が重なった。扉を開ける一瞬、はっと我にかえって炭治郎と繋がっていた手を離す。半ば振り払うようにして手を解いたのに、炭治郎の様子はちっとも変わらなかった。それどころかすぐに私より一歩下がって、胡蝶様の前に私を出すような形をとった。
胡蝶様は優しく美しい微笑みを浮かべながら、「こんにちは。想像していたより、可愛い御客人でしたね。今日はなんの御用で?」と尋ねてきた。ただ椅子に腰掛けて微笑んでいるだけでも、分かる。この人は強い。師匠と似た感じがする。強者の気配はとても分かりやすい。
「お目通り頂きありがとうございます。蛇柱、伊黒小芭内の遣いで参りました。AAと申します」
「あぁ、何処かでお見かけしたことがあると思ったら、伊黒さんの継子の......Aさんですね」
「はい。今日は、師範である伊黒小芭内より、胡蝶しのぶ様宛の封を預かって参りました。手渡しにて、失礼致します」
「はい、確かに受け取りました。......中身はどのようなものでしょうか」
「人の血に影響を及ぼす血鬼術についての報告書......とだけ、伺っております」
「なるほど、先日口頭にて伝えて頂いた件ですね。きちんと読ませて頂きますと、伊黒さんに謝意の旨お伝えして頂けますか?」
「御意に御座います」
「ありがとう。......要件は、以上ですか?」
「はい。すみません、わざわざお時間の方頂いてしまって」
「それは構いませんが......貴方も多忙なのでは?手紙であれば、鴉をお使いになられたらいいのに」
それは多分師匠なりの気遣いなんです、とは言えなかった。
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さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時