拒絶。 ページ38
微睡む意識の中で、はっきりと頬に近い畳の匂いがすんと鼻をくすぐった。誰かの暖かい温もりが背と項へ触れ、だらんと垂れる首を支えられる。腰をついたのは暗い畳の上だった。あれ、と気がついた時には、宴の喧騒が随分遠くにあった。
「Aちゃん、ねえ、大丈夫？すごく気分悪そうだけど」
「んん......ん〜、ん」
「何、服、窮屈なの？脱ぐ？」
「んー、ししょお......」
「え、師匠？え、うそ、伊黒様とこういうことしてんの？」
上から一つずつ釦を外されていく。
気持ち悪かった胸元が少し解放されて楽になった。
「いやーほんと、ずっと思ってたけど、柱ってやっぱ若い女隊士食い放題だよな。俺一回だけ伊黒様見たことあんだけどさ、あんなに無愛想に見える人でもしっかりやることやってんのな」
上から降ってくる言葉をきちんと脳で噛み砕いて処理出来ないくせして、彼のその言葉だけが妙に引っかかった。
今、私の師匠を、悪く言われた？のか。よく分からないけど、師匠を侮辱されたような気がする。私の師匠を。私を見つけてくれた、たった一人だけの師匠を。たくさん失敗して、まだ完璧に蛇の呼吸の型もこなせる訳じゃない、駄目な私を捨てないでいてくれた、私の大好きな師匠を。
何も知らないくせに。師匠が寝る間を惜しんで鬼を狩っていることも、未だ自分の剣技に納得せず日々修行に励んでいることも、何も知らない癖に。
「ししょお、馬鹿にすんな！」
目の前の体を思い切り突き飛ばし、手の内から逃れて、なんとなく光の見える出口へとふらつく足取りで歩き出したが、どこが前か後ろかも分からない状態では満足に歩くことすらままならず、よろめいたところを「おっと」と支えられ、そのまま引き戻された。
嫌だ、この手と、この温もり。すごく嫌だ。不快だ。師匠とも、炭治郎とも、善逸とも違う。嫌だ。
「ごめんごめん、言いすぎた。そりゃあ大事な師匠こんな風に言われたら嫌だよね。ごめんね」
「さわんないで、はなして」
「つれないこと言わないで。さっきまで乗り気だったじゃん」
「やだあ、さわんないで、いやだ」
腕に力が入らない。拒絶しようとしているのに、いとも簡単に押し倒され、首筋に何か生暖かいものが触れた。その瞬間蘇ったのは、炭治郎だった。この感触、ほとんど同じなのに、違う。全然、ちがう。嫌だ。炭治郎じゃない。炭治郎、どうして。炭治郎じゃ、ないと。
「やだ」
たすけて
「たんじろ......」
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さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます！新作アンケも失礼しました…！ (2020年11月14日 0時) (
レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ．更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです！！すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…！！続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております！！ (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです！ (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：子@さぶ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2020年10月24日 12時
