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善逸は私にずっと背を向けているから、彼がどんな顔をしているのか分からない。けれど、少し彼は怒っているように感じた。ひりひりと感じる痛みが微かに肌を走っている。ずっと遠くで雷が鳴っているような、そんな感覚だった。
「ごめん、善逸の言ってること......難しくて、よく分かんない。怒らせたなら、ごめん」
「あ゛ーッもう俺の言ってること根本的に伝わってないな!?そんなだから炭治郎にも付け込まれんだぞお前!!」
いきなりガバッと振り返った善逸の顔には青筋が浮かんでいた。若干白目も剥きかけていて、あぁ、本気で怒った時の顔ではないなと思った。善逸が本気で怒った時の顔は、もっと怖い。怖くて、静かだ。
でもやっぱりちょっと怒っているから、何に怒ってるかくらいは理解しないと本気で怒られそう。
っていうか、炭治郎にも付け込まれるって、なんだ。炭治郎も同じようなことを言っていたような気がするけど。
「なんかそれ、炭治郎にも言われた......付け込まれてるのかな、私」
「......試すか?」
「えっ?」
すると善逸はするりとこちらに寄ってきて、瞬く間に私の上に跨った。さっきの変顔に近い表情とは違って、静かで、穏やかな、それでいて真剣な顔。いつもべそべそと転げ回っているから分かりづらいけど、善逸は顔立ちがかなり整っている。蒲公英の花弁のような派手な色の髪がさらりとこちらへ垂れてきて、暗がりの中の蜂蜜のような瞳が真っ直ぐにこちらを見ている。
顔の横に置かれた手は明らかに私よりも大きくて、意識したことは一度もなかったけれど、腕も逞しくて鍛え抜かれていた。私も普段から筋肉を鍛える修行は当然しているが、幼少期にあまり栄養をとらなかったせいで思うように肉がつかない。そんな私とは違う、太くて、ごつごつした腕。
本能で分かる。単純な力だけで敵わないと。
静かにこちらを見下ろす、綺麗な善逸の顔を見上げて、ただ瞬きを繰り返す。
「......抵抗しないの?俺は今多分、“付け込んでる”んだけど」
「あ、......そう、なの?」
「そうでしょ。俺には抵抗して、炭治郎には抵抗しないなら、お前にとって炭治郎は特別ってこと」
多分、と付け加えた善逸に、多分かい、と突っ込みそうになる。
上にある善逸の顔をぼーっと見つめていても、とくべつ抵抗しようという気にはならない。多分、これより先には善逸が進まないことを知っているからだ。
「......マジで抵抗しないのかよお前」
いいの?と言った善逸の手が、するりと寝巻きの中に差し込まれた
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さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時