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次の日。
いつも通りの時間に、いつも通りバスに乗る。
夏休み中も登校は制服で、という怠くすら感じる校則を律儀に守ってはいるものの、やはり制服はありえない程暑い。早くワイシャツを脱いでしまいたい衝動に駆られながらバス停から降りると、「あ」という揃った声が後ろから聞こえて、振り向くと同じ顔が2つ並んでいた。
随分久しぶりに見たように感じる二人に「……おはよ」と声をかけると、侑くんからは「おーう」と軽い声が返ってきたが、治くんからはかえってこない。彼はただ相変わらずよめない無表情でこちらをじっと見つめるだけ。侑くんはとばっちりを食うまいと触れないようにしているのかわざとらしく口笛を吹いて目線を外し、少し治くんから離れた。
「お、治くん……おはよう」
殺されるかもしれない。
そう思いつつも一応挨拶はしてみると、治くんは表情を一切変えないまま肩にかけていたスポーツバッグを自分から引き剥がしてその勢いのまま侑くんにそれを押し付けた。勢いが強すぎて押し付けたというよりは投げ飛ばしたような速度になっていたので侑くんは「ホギャッ!!」と叫んで荷物の下敷きになり、そのままぶっ倒れた。身軽になった治くんはそのまま全速力でこちらに駆け出してきたが、そのあまりの勢いと顔の表情の変わらなさに恐怖を覚えた私は反射的に走り出し、「なに!?なになになになんなの、嫌!」とよく分からないまま逃げ出した。
しかし運動部、それも強豪のスタメン選手にお土産やら差し入れやらの荷物を抱えまくった状態で走りに敵うはずもなく、あっという間に追い付かれて後ろから抱き締められた、というよりは捕まえられた。
やばい殺される、よくわからんけど殺されてしまう
「お、治くん……?」
私を後ろから捕まえたまま何も言わず、アクションを見せるような素振りもない治くんを恐る恐る呼んでみると、抱きしめられる腕の力が強くなった。少し、いやかなり苦しい。
「……この浮気者」
「へ……?」
振り向くと、ひどく拗ねた顔をしている治くんと目が合った。
いつもより子供っぽい、駄々っ子みたいな顔。
「……俺ばっか会いたなって、あほみたいや。Aは、いっつもすずしー顔しとる。むかつく」
「え、い、いや」
「その上幼馴染と浮気か」
「いやてつろーはそんなんじゃ……私の事からかってるだけだよ、あのひとは」
「でもむっちゃマウントとられた。むかつく」
治くん、相当ご立腹みたいです
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亜莉沙(プロフ) - すごい続きが気になる終わり方...! (2020年12月21日 15時) (レス) id: 363b9c8c34 (このIDを非表示/違反報告)
みやすなすー - 続き見たかったよぅっ…! (2020年6月30日 18時) (レス) id: 22d4d41058 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず。(プロフ) - 子さんの書く夢主ちゃんと双子の掛け合いが可愛らしくて大好きです!更新楽しみにしています!お身体に気をつけてください! (2020年4月20日 3時) (レス) id: 6fdce1ba75 (このIDを非表示/違反報告)
なつみかん(プロフ) - 大好き過ぎて更新楽しみにしてます!笑 (2020年3月21日 0時) (レス) id: 0a5ad8d0ef (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 更新お疲れ様です!私も見る専です!笑 (2020年3月20日 16時) (レス) id: 94878ef260 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年3月15日 0時