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本当に何も理解が出来なくて、ただふわりと甘くて大人っぽい、人工的なようで自然な香りが鼻先を擽った。昨日とはまた違った匂いで、香水を日によって使い分けているのだ、とすぐに気がついた。けれど私にとって重要なのは彼の匂いじゃなくて、そうじゃなくて、この額に灯る不思議な柔らかい熱で。

困惑したまま身じろぎすら出来ていない私から離れた蘭さんは、何も変わらず艶っぽく薄い笑みを浮かべたまま軽く首を傾けた。


「どお?知り合って間もない男からチューされちゃった気分。悪い子どころか犯罪者ってカンジ?」


チュー、された。

その単語に頭から爆発してしまいそうになって、私は鞄を握り締めたまま彼に背を向けて走り出した。すぐそこに家があるとは思えないくらい全速力で走って、逃げるように走って、一瞬で到着した家に駆け込んですぐにドアを閉めた。息切れしても冷静にはなれないし、何をされたのか、自分の身に何が起こったのか、脳で噛み砕いて咀嚼するまでにはまだまだ時間を要すようだった。

切り揃えた前髪越しに額を抑え、ずるずるとその場にしゃがみ込む。あの人の香りと、繋がれた手だとか、掛けられた言葉だとか、その甘い声だとか、唇、の感触だとか。そんな、思い出したって、血の巡りが早くなるだけのものを浮かべては瞳が潤みだす思いをした。鞄の中にしまっているケータイには彼の名前。袋の中には彼の選んでくれたピンクゴールドのペンダント。

嗚呼きっと、きっと今日はこの熱を抜けられないんだわ。何を見たって、何を感じたって、きっとあの人の薄い笑顔と、アメジストみたいな瞳と、その鮮やかなグラデーションカラーのお下げ髪が、頭を支配するんだわ。

いつの間にか、罪悪感なんて忘れ去って、恥という名の熱にばかり浮かされていることに気が付かぬまま、私は暫く立ったまま頬を抑えて惚けていた

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名無 - 神すぎる。占ツクでここまで完成度の高い作品は久々に見ました。 (2022年2月13日 13時) (レス) @page25 id: 918f2226ec (このIDを非表示/違反報告)
桜妃(プロフ) - 作者様語彙力ありすぎでは…!?更新楽しみにしてます! (2021年9月6日 3時) (レス) id: 16f20e3b96 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴ子(プロフ) - はじめまして…こんなに作品に引き込まれたのは初めてです;;主様のペースで更新楽しみにしております! (2021年8月26日 12時) (レス) id: de92cbd6b8 (このIDを非表示/違反報告)
しいい - すごく好きです!続き楽しみにしてます!! (2021年8月26日 1時) (レス) id: 69df95b685 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 大っ好きです!蘭ちゃん…可愛すぎる…更新楽しみにしてます\(//∇//)\応援してます! (2021年8月25日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/  
作成日時:2021年6月30日 23時

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