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オートロック式の扉を開けて、数種類の靴が揃えてある玄関で乱雑に靴を脱ぎ、上がった先には、白く大きめのソファの上に座って適当なテレビを見ている愛おしき弟がいた。顔も動かさずおかえりーと軽めに言った弟の方へ体を投げ出すと、うお、と軽く吃驚したような声を出しながらもオレを鬱陶しいと跳ね除けることをしない唯一の身内に頭を押し付けた。りんど〜、と甘怠い声を吐いて。


「どうしたんだよ……つか今日あのお嬢様学校の女口説きに行ったとか言ってなかったか?帰ってくんの早くね?」

「……逃がした」

「は?」

「食う前に逃げられた」


言ってから苛立ちが込み上げてきて幼稚な舌打ちが零れた。

ようやく触れられた、と思ったら耳まで爛れ落ちそうなほど赤くしながら逃げた女を追いかけて捕まえなかったのは、あの時捕まえてもきっと女を手に入れることは出来ないと思ったからだ。オレはあの女の体だけを蹂躙したい訳では無い。だからといって、あの女の何が欲しいのか一向に検討もつかなかった。オレは何がしたい?あの女を連れ出して、今日オレは何を得た?オレはあの女に、何を求めている?


「おいおい、兄貴らしくねえぞ。ああいう女は死ぬほど褒めとけばコロッといくだろ」

「そーいうんでもねぇんだよな。もっとちゃんと落としたいっつーか」

「家連れ込む時は連絡しろよ、帰って来ねえから」

「りんど〜、兄ちゃんの話聞いてる?」


竜胆の膝の上からその顔を伺うが、聞いているようで流していると見て間違いない。下から見上げるその顔がオレ似の綺麗なものでなければぶん殴っているところだが、近くで見るとやはり益々オレの弟は可愛くて綺麗だ。当然である、オレの弟なのだから。


(……目、コンタクトも入れてなかったな)


至近距離でこちらを見上げた素のままの綺麗な瞳は何も纏わない裸眼で、硝子玉のように透いていたので参った。思わず、くり抜いてしまいたいと思った。

唇に一瞬触れたその肌と、指に絡めてみた健康的な髪と、店先で見せたあどけない顔。その幼くも女らしい顔や、くるくると変わる表情にいちいち目を奪われ、つい手を伸ばしてしまいそうになるのを堪えるのには骨が折れた。なぜオレは、いったい何故、あの女に触れた指をぼーっと眺めているのだろう。何故、あの時追いかけて捕まえることをしなかったのだろう。


(まぁいいや……欲しいならちゃんと手に入れるし)

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名無 - 神すぎる。占ツクでここまで完成度の高い作品は久々に見ました。 (2022年2月13日 13時) (レス) @page25 id: 918f2226ec (このIDを非表示/違反報告)
桜妃(プロフ) - 作者様語彙力ありすぎでは…!?更新楽しみにしてます! (2021年9月6日 3時) (レス) id: 16f20e3b96 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴ子(プロフ) - はじめまして…こんなに作品に引き込まれたのは初めてです;;主様のペースで更新楽しみにしております! (2021年8月26日 12時) (レス) id: de92cbd6b8 (このIDを非表示/違反報告)
しいい - すごく好きです!続き楽しみにしてます!! (2021年8月26日 1時) (レス) id: 69df95b685 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 大っ好きです!蘭ちゃん…可愛すぎる…更新楽しみにしてます\(//∇//)\応援してます! (2021年8月25日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/  
作成日時:2021年6月30日 23時

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