第二話 ページ3
「ありがとう。助けてくれて」
「なに、礼には及ばんさ。困ったときは助け合い、だろ？」
少女はそう言って屈託なく笑う。
そう。屈託なく笑ったはずなのに、なぜだろう。どこかその笑顔は、陰りを感じさせるものだった。
そう。まるで、こちらを信頼していないような。値踏みを、冷静に品定めしているような。
けれど、相手は自分を助けてくれた、いわば恩人。不穏な考えがよぎるなど失礼に値する。いやいやと頭を振って誤魔化した。
「名前は？ ボクはNだ」
「Nか。私はカエデだ。所以あって町の名は明かせないが、勘弁してくれ」
そう言って二人は握手する。
ゾロアとコリンクもお互いに何やら話し込んでいる。どうやら気が有ったようだ。
と……。
ぐうう〜……。
ゾロアの腹が、盛大に鳴った。
ゾロアはほんの一瞬だけ小っ恥ずかしそうに下を向くと、Nの方を見上げた。
けれど。
「しまった……今はポケモンフーズの手持ちがない」
そう。突然崖から転落したため、諸々の道具が入ったバッグを何処かになくしてしまったのだ。
と、カエデがふふっ、と笑った。
「そう言うと思ってな。道中いくつかきのみが生えていた木があったから、きのみを採ってきたぞ」
そう言って、カエデが持っていたレザージャケットをバサリと広げる。
そこには大小様々なきのみがずらりと敷き詰められており、見ていてお腹が空いてくるようだった。
「食べてもいいのかい？」
「ああ。元々、そのために採ってきたものさ」
「ありがとう。それじゃあ、遠慮なくいただくよ」
Mはそう言うときのみを二つとって片方をゾロアに渡す。
カエデの方もコリンクに“ほら、食いな”といいながらきのみを差し出している。
よっぽどお腹が空いていたのか、短い歓声を上げてきのみにかぶりつくゾロア。それを微笑ましい気持ちで見つめながら、Nもきのみをかじった。
「……すこし、いいかい？」
「ん？ なんだ」
ジャケットに入ったきのみも少なくなってきた頃。
Nがカエデに声をかけた。
カエデは嫌いな味を引いたようで苦い顔をしているコリンクにクスクスと笑っていたが、Nが声をかけるとすぐにこちらを向いてくれた。
「ボクは、ボクたちはここから出られるのかい？」
「ああ。どうにか登れそうな場所を見つけた。そっち一人じゃ難しいだろうが、こっちが手伝えばどうにかって感じだ」
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←第一話
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：綾水鏡花 | 作成日時：2022年12月18日 20時
