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薄暗い実験室と思わしきそこは、薬品臭くて落ち着かない。
薬屋とはまた違った臭いが鼻をつんざく。
指差しで示された古めかしいソファに座ると、ギジリと鈍い音が鳴った。自分をおいて正面に座るAの顔はいつも以上に静かだ。

「俺がファデュイであることはもう気付いてるようだな。」

先に言葉を切り出すとは。声には出せないが驚きが顔に出る。

「隠す気もないのかお前。オイラだったらそんな事しないぞ。」

「嘘をついた訳では無いからな。確かに俺はファデュイだが、スネージナヤを離れてだいぶ経つ。帰ったとて年に一回。それも数日と言ったところだ。」

「それも嘘じゃないのか〜?」

「相変わらず面倒だな白いの。」

「白いのって呼ぶな!オイラはパイモンだ!!」

目の前に出された紅茶にさえ、疑いの目を向けてしまう。
自分たちが部屋に入ってから用意されたとはいえ、器に毒が仕込まれているかもしれない。
そんな疑念が頭の中に残る。

「お前たちをどうしようとは思っていない。このお茶も、ニィロウから貰ったものであり、自分で飲むつもりだったからな。毒を仕込む余裕もないぞ。」

そう言いながら、自分の前に置かれたカップに手をつけた。
言動とは裏腹に美しい所作で紅茶を飲む姿から、本当のことを言っているのだと察する。
ならばと、ひとつ掛けに出た。

「これからいくつか質問をするけど、俺の質問にちゃんと答えて欲しい。嘘はつかないで。」

「旅人、そんなことをこいつが守るはずないだろ!」

パイモンはずっと不安そうな顔で旅人の横にいる。
だが、そんな言葉を覆すように、Aは返事をした。

「ああ、勿論。嘘はつかない。」

「じゃあ、まずひとつめから。」

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作者名:サメ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2023年9月3日 2時

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