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Ren side
Aさんとダイニングテーブルに向かい合わせで座り、用意された朝食を食べる。
「簡単なものでごめんね」とAさんは申し訳なさそうに言ったけれど、目の前に並んだ料理は俺にとっては贅沢すぎるほどの量だった。
スープを飲むAさんの耳にかけた髪がはらり、と落ちる。
それを押さえ再びカップに口を付けるAさんの姿は太陽に照らされていつも以上に綺麗だった。
じっと見つめていた俺の視線に気づいたAさんが「なによ、」と小さく笑ってつま先で俺のスネのあたりをこつんと蹴った。
「いって」
大して痛いわけでもないのに大げさに顔を歪めるとAさんが慌てたような表情を見せる。
「うーそ、」
俺がニヤリと笑えば、Aさんは「心配したの返してよ」とまた一つスネを蹴り上げる。
「やだよ」
えい、とAさんのつま先を上から抑え込むと、そこからは互いに朝ごはんそっちのけで踏んだり蹴ったりやりたい放題。
ダイニングテーブルの下で繰り広げるなんとも幼稚で平和な戦いに二人で顔を見合わせて笑い合った。
食べ終わった皿をAさんがシンクに片付ける後ろをついて歩く。
「俺が洗うよ」
「いいよ、ゆっくりしなよ」
「やーだ」
シンクの前に立ち腕まくりをすると、Aさんは観念したように「ありがとう」と呟いた。
俺が皿を洗い、Aさんがそれを拭き上げる。
隣に並んでなんでもない冗談を言いながらこんな風に過ごしているとなんだか、新婚気分で恥ずかしくなる。
「なんか、新婚気分ですげぇ幸せ」
俺がそう笑うとAさんは少し照れた表情をしながら、小さく頷いた。
あぁなんて幸せなんだろう。
昨日までのどろどろとした黒い感情が、洗い流した泡と一緒に排水溝へと吸い込まれていく。
ずっとこうしていられたらいいのに。
Aさんとの優しくて温かい時間がそっと全身に拡がっていくのを、俺はゆっくりと噛みしめた。
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さーや(プロフ) - み い .。*さん» えぇぇありがとうございます!めめくんって呼びたくないですか?で、ここぞというときに名前で呼んで困らせたい。笑 (2020年2月21日 12時) (レス) id: 4528227f28 (このIDを非表示/違反報告)
み い .。* - このお話好きすぎて2時間も読んじゃいました(笑)"めめくん"呼び、、、最高ですね、、、() (2020年2月20日 16時) (レス) id: 5421e01398 (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - AisnAikさん» コメありがとうございます!翔太くん落ちですねーいけるか、書けるか?!頑張ってみます!笑 (2020年2月7日 20時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
AisnAik(プロフ) - すごくおもしろいです!めめもむくわれてほしいですが翔太くん落ちがいいです! (2020年2月7日 15時) (レス) id: 01c8673035 (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - なつみさん» コメありがとうございます!めめ幸せにしたいですよねー!笑 本当どうするか決めずにただ書き続けてる状態ですが、これからもお付き合いいただけると嬉しいです〜! (2020年2月6日 22時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さーや | 作成日時:2020年2月5日 12時