∂ ページ38
「…なんだよ。」
むすっとして憎まれ口を叩いたけど、相葉さんは楽しそうに笑った。
それに口を尖らせると、頭をわしゃわしゃ犬みたいに撫でられて
「やめろよっ！」って身を捩った。
「…で、何の用？」
手で適当にぐしゃぐしゃになった髪を撫でつけると、相葉さんがまな板の具材を鍋に入れた。
「昨日さ、ジュンが俺んとこ来てさ…今俺のベッドに寝てる。」
「はぁっ⁈」
思わぬ言葉に大きな声が出て
相葉さんに「しぃーっ！」と口を塞がれた。
「みんな寝てるから！しーずーかーにーっ！」
「むぐっ…あんたが1番うるさいわ！」
ぎゃあぎゃあ言い合ってほっぺたを引っ張り合い、息が切れてくっついていた身を離す。
「…で？どういうことだよ？」
「もう、落ち着けっての。そんな目で見んなって…」
相葉さんがやれやれって感じで苦笑いして、鍋をお玉でかき回している。
どうやらお味噌汁を作っているっぽい。
「昨日カズが部屋に帰ってちょっとしてさ、俺も部屋に帰ったの。そしたらいきなりジュンが部屋に来てさ、今日からまーと寝る！って言うからさ。」
相葉さんがチラリと僕を見る。
「ごめんねは？言えなかったの？」
「…。」
こういう時、悔しいけど
なぜか相葉さんはちょっと大人びて見える。
いつもじゃれあってて、到底歳上とは思えなくて
隣で馬鹿なことを言ってたりするのに。
「言おうとは、思ってる…」
ああなんで、僕の口はこんなに動かしづらいんだろう。
「ま、カズのペースで全然いいんだけどさ。」
相葉さんはちょっとしゃがんで、僕と目を合わせた。
「いつも仲良い2人がケンカしてると、俺らも心配だからさ。」
「…うん。」
僕だってできることなら早く仲直りをして、ジュンくんといつもみたいに笑って話をしたい。
「でも…どうしたら…」
あの調子だと、しばらく僕とは話すつもりはなさそうだったし
もしかしたら部屋から出てこないつもりかもしれない。
謝ってしまえばいいのはわかっていても、そもそもその状況を作れるかの方が問題だった。
「そんなことだろうと思ってさ。」
相葉さんがエプロンのポケットから何かを取り出した。
…それは、あの黄色い花びら。
「壊しちゃったものはしょうがないから、お詫びにまた買ってこよう。ほら、一緒に行くからさ！」
くるくると目の前で花びらが回転して相葉さんの手から地面へと落ちていくのを見ながら、僕はゆっくりとその首を縦に振った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 474人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
