瑠璃色の空～特別編～ (ページ26)

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☆ ページ26

…ジャラリ

微かな音と空気の震えるのを感じて
俺は慌てて炎で壁を作って、相手から姿を隠した。

標的を見失った槍状の鎖が炎を突き破って
体のすぐそばを掠め飛んだ。

「うあっ…」

カズとジュンは恐怖と緊張で動きが固い。

当たり前だ。

2人は智くんと雅紀のトレーニング以外でほとんど能力を使わない。
ましてや、身内以外と能力を使って戦ったことなどないんだ。

…ここから2人を逃がせればいいけど、たぶんそれも無理だ。

どういう能力なのかよくわからないけど、瞬間移動を引き寄せたのだとしたらそれは使えないし

カズにバリアを張ってもらって、俺が囮になれるのかもわからない。
普通に考えれば、俺よりも戦いに不慣れな2人を狙いそうだし…

…逃げるのが無理なら、俺がゲンジを倒すしかない。

「カズ、ジュン。」

俺が呼ぶと、2人は少し怯えた表情をしていたけどそれでも勇ましく強い目をしていた。

「あいつは強敵だ。遠距離攻撃型、あの尖った鎖を操る能力者だ。

2人は俺から離れないで着いてきてくれればいい。
ただ、無理だけはしないで。技を避けることだけを考えろ。」

俺の言葉に、2人が黙って頷いた。

2人の身体能力は俺よりも優れているから、相手の技を避けるだけなら何とかなるはずだ。

…

ゴオッ…

俺は炎を放って周りの木を燃やした。

煙が出て、視界が悪くなる。

短期決戦で仕留める為に、俺が打った博打だ。

「…お前の相手は、俺だ！」

俺は炎を身に纏い、相手の前に飛び出した。

ビュンッ…

目にも留まらぬスピードで、鎖が俺を貫こうと向かってくる。

俺は炎の中でゲンジの姿を確認した。

迷っている暇はない。

身を翻して鎖を避ける。

「…？」

鎖の動きが微かに鈍くなった。

見ると、銀の光が渦巻いて鎖を押さえつけるように取り巻いている。

…ジュンの力だ。

「翔さんっ…

俺の力じゃ完全に止めんのは無理だけど、このくらいならっ…」

ジュンの声が途切れ途切れに聞こえる。

すると、今度は目の前を金の光がほんの一瞬視界を覆った。

「僕も、これくらいなら…」

今度はカズだ。

きっと俺たちの周りにバリアを張ってくれている。

…無理はするなと言ったけど、2人の気持ちは大事にしたかった。

戦いにおいて情は不要なのかもしれないけど
もちろんそれは、全員で無事に帰るためなのはわかっているけど

…それでも俺は、3人で戦うことを選ぶ。

「行くぞっ！」

そう叫び、覚悟を決めた。