☆ ページ24
俺とカズの隣で、ジュンは不思議そうに首を傾げている。
「カズが言った唯一の星って何なの？」
「北極星って言ってな、真北の方角で輝いてる星があるんだ。地球の自転軸に最も近いから不動の星って言われてる。こぐま座のポラリスって星で、明るさ2等星の恒星だ。」
俺が指を差すとカズとジュンもその先を見つめた。
「地球の歳差運動で数千年に一度入れ替わるけど、俺らが生きてるうちは変わんないだろうな。」
「歳差運動？」
「地球の地軸って勢いがなくなったコマみたいに回ってるんだ。そういう運動のことを歳差運動っていうんだよ。」
「へえ…」
最近調べて知った、付け焼き刃的な知識で拙い説明でも、2人は理解してくれたらしくてホッとした。
「そういえば、2人は北斗七星は見つけなかったの？」
「みっけたよ、あれでしょ？」
ジュンが得意げに柄杓型の星座を指差す。
「…ジュンくん、北斗七星は北の空だよ？」
「えっ…あ、そっか。
わざわざ北極星見つけなくても良かったのか…」
わたわたするジュンとそれを見てくすくす笑うカズ。
2人にしか作れない空気に、やっぱり兄弟なんだなあ…としみじみしてしまった。
…
上の方にあった視線を徐々に下の方へと移していく。
地平線にほど近い場所に、さそり座が見えた。
「さそり座って、本当に胸が赤いんだね。」
ジュンがさそり座を指差して笑う。
「それに、本当にオリオン座はどこにも見えないね。」
カズがキョロキョロと空を見上げて言った。
「本当に、オリオンはさそりに刺されて逃げたんだね。」
ジュンがそう呟くと
「そりゃ、あんな傲慢なやつ刺されて当然じゃない？」
カズもそんなことを言って。
「どんなに強くても驕っちゃいけないってことだな。」
そう言うと、2人も深く頷いていた。
…
かれこれ2時間くらいは観察していたのだろうか。
時計を見ると、普段だったらとっくに2人は寝てる時間。
「じゃ、そろそろお開きにするか。」
「はーい…」
俺の言葉に従いつつも名残惜しそうに空を見る2人に、俺は慌てて続けた。
「また来よう。今度は違う季節の時に。」
「…うん！」
そう言えば、2人はとても良い顔をして笑うから
本当に参っちゃう。
「翔さーん、瞬間移動使ってもいい？誰もいないし。」
カズがそう言うのは、最近コントロールが上手くなってきたからだろう。
頷けば、カズは俺とジュンと手を繋いで…
「じゃ、行くよっ」
瞬間、俺らの姿はその場から消えていた。
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