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-キバナside-
Aとの試合から、およそ３０分後、
オレ様は第一控え室のベッドで目を覚ました。
メロンさんによると、Aは今観客席にいるダンデを
迎えにいったっきり戻ってこないらしい。
ダンデのことだ。バトルの話でもしてんだろ。
メロンさんが入れてくれた眠気覚ましのコーヒーを飲みながら、
オレは先ほどの試合のことを考えていた。
パワーと頭脳で勝利をもぎ取るダンデと違い、
アイツの戦いには、勝ちたいという感情よりも、
相手を何としてでも、"殺す"。そんな殺気が感じられた。
あぁ、思い出すだけで、口角が上がっちまう。
「………どうだった？キバナ。
キルクスが誇る、最強のジムトレーナーと戦った感想は。」
「……正直いって度肝抜かれた。
ずっと大人や年上ばっか相手にしてきたオレ様だが、
まさかの二個下の可愛い女の子に、
あんなにゾクゾクせられるなんて、想定外だったからなァ。」
楽しくてしょうがなかった。と付け加えて、
メロンさんに向き直ると、メロンさんはニヤニヤしていた。
「へぇ、……アンタにそんな顔させるなんて、わざわざ
ジムを休館にしてまでAとアンタを戦わせたのは正解だったかもねぇ。」
「…なぁ、メロンさん。一つ聞いてもいいか？」
「なんだい？？」
「ワイルドエリアで初めて会ったとき、
Aは、ボールを使ってなかった。
ジムトレーナーはボールの使用が原則だろ？なんかわけでもあるのか？？」
少々表情に驚きを浮かべたメロンさんは、
これからここに来るであろう2人分のコーヒーを煎れながら、ゆっくりと口を開く。
「…あの子はね、心に深い傷をおってるんだよ。
小さい頃、たくさんの大切なものを失ったんだ。
自分のポケモン、大切な仲間が、いなくなるかもしれない。
そんな恐怖心が、あの子のなかにあるんだと、私は思ってたんだよ。」
「思って、た？」
何かを匂わせるような口調に、オレが思わず聞き返すと、
メロンはニコッと笑ってコーヒーをカップに注ぐ。
「だって、アンタがAにちょっかいかけてくれたおかげで、
Aは必然的にグレイシアとバイバニラを
ボールに入れるしかない状況にもっていかれたんだろう？
びっくりしたよ。昨日突然Aが
机にスーパーボールを2個置いたときは。
あの子がキバゴ以外に自分のポケモンを
持つ日が来るなんて思ってもみなかったからね。
その点に関しては、礼を言っとくよ。キバナ。」
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作者名：志那 | 作成日時：2020年5月13日 13時
