サキュバスですがなにか。【３】 (ページ30)

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しんと静まり返った。
僕の部屋には、ただAさんと僕が突っ立っていた。

「…Aさん」

名前を呼んだ。綺麗な瞳が僕を捉えた。
久しぶりに何の隔てもなくAさんと向き合ったような気がした。

「ありがとう…助けに来てくれて」
「お礼なんて言われる立場じゃないの。私が瑛一を巻き込んだから」

Aさんは俯きがちにそう言った。呟くような、ぽつりとした声だった。
僕は一歩進んで、Aさんと向き合った。

「そんな事ないよ！巻き込んだなんて言い方…やめてよ。それに、その、この前は勝手に逃げてゴメン。あの時はわけわかんなくなっちゃって逃げ出しちゃったけど、これからもAさんと仲良くしていきたいと思ってる。だから」

「ごめんなさい」

さっきよりも弱々しい声が、でもその声はしっかりと僕の声を遮った。
最初、聞き間違えかと思った。次に、自分が勘違いしているのかと考えた。
でもそうじゃない事はAさんの表情が物語っていた。本物の顔だった。

「えっ…と、どういう、事」
「私が瑛一に近づいたから、結果瑛一を危険な目に遭わせちゃった。本当は自分は瑛一や、律、舞子ちゃん、真也に近づいちゃいけなかった存在なんだよ私は！今までありがと、瑛一」

全てを無理やり吐き出したかのように、苦しげな顔で言われたって、納得できるわけないだろ。
その苦々しい表情すら愛おしい。でも僕を置き去りにしないで。