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僕はそっと、彼女のスマホを手に取る。そして、何度も繰り返し唱え覚えてきた番号をぽつぽつと入れていく。若干の罪悪感。最後の番号を入れた所で、画面がぱっと切り替わった。
はっとした。現れたホーム画面の待ち受けには、僕がいた。めっちゃ笑顔の僕がこちらを見ている。
えっ、この写真…いつのだ?半袖だから夏?丁度、体育祭の頃ぐらいだろうか。
待ち受けに僕の写真を使っていたのか…僕のいない所でも、僕が大切にしてもらっている感じがしてとても嬉しくなった。
幸せを噛み締めて、でも目的は果たそうと、罪悪感に包まれながらもチャットアプリのアイコンをタップする。どうせ帆立君とトークしてるんだろ、と二人のトーク履歴を探す。かなり下の方に、それはあった。躊躇いはあったものの、ここまで来たら意地だった。僕は勢いよくタップする。
表示されたトーク画面。僕は驚くこととなる。
二人は、画面の中で争っていた。
『どうして俺を無視するんだよ』
『なんであなたがこの学校に来たのよ。あなたと話すつもりもないし、これ以上私に関わらないで』
『A…お前、俺との約束を忘れてしまったの』
『今から思うと、本当に無駄な約束をしたと思ってる。ねぇ、本当にお願い。私と関わらないで。今私幸せなの。あなたに関わってる暇はないの』
『あの、瑛一っていう人がお前を変えた訳?前はあんなに俺の事好きでいてくれたのに』
『好きだったんじゃなくて、そう決められてたからでしょ。許嫁だなんてバカみたい』
こういうやり取りが永遠と…帆立君はAさんの許嫁なのか?驚きの新事実に心臓が飛び出ちゃいそう。最後までスクロールしていると、最後にびっくりするような事が書かれていた。
『早く、戻ってこいよ。じゃないとお前の大切な人を傷つけるぞ。Aが俺の所に戻ってくるか、それとも戻ってこないで瑛一って奴が傷つけられるのを黙って見てるか…文化祭が終わるまでに選べよ』
これに対しては、僕もびっくり。こんなことって、現実にある?文化祭まではあと僅かしか日にちがない。ひどく恐ろしかったし、腹立たしかった。僕を餌に、Aさんを釣っているってことだろ?でも、それと同時にとても悲しかった。Aさん、辛い思いをしていたんじゃないか。
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作者名:稲穂 佳子 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2019年3月15日 15時