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「…A」
「は、はい…っ、なんでしょうか?」
カーテンで遮られた窓から暗闇が覗き始める
最後の患者さんを見送りその書類等を書き終えたのだろう、上司の私を呼ぶ名前が響き渡った
目の上にかかる自身の水色の髪の毛が揺れ動き、着用しているスクラブの薄いピンク色に皺ができる
静寂の中にいきなり投下されたその言葉に体が大きく反応を示す
驚きの色を見せる表情を抑えながらその声に返事を返す
ゆっくりと、書類が重ねられたデスクの前の椅子に座る上司へと視線を降ろした次の瞬間、
「今日、君がボクのことを噂していたそうだね」
「…め、滅相もございません」
自身の暗い青色の瞳を見上げる彼の灰色の瞳と視線が重なり合う
無表情のまま、淡々と言葉を並べる上司に急いで否定の言葉を返す
実際、私が噂をしていたのではない
先輩がローズハートさんについて語っていただけなのだ
たしかに1番初めの一言は私のものだったかもしれないけどそれはあくまで私の独り言だから噂ではない
結論として、自身は無実であると脳が叫ぶ
その結果に従うように上司に否定の言葉を向ける
心臓がこの空気に触発されドクドクと音を鳴らし始める
「…君には、ボクが女性と遊んでいるような男に見えるということかい?」
あの夜に何度も投げかけられた声色に似た低く掠れた彼の声が自身の耳に轟く
意識しないようにしていたのに一気に枷が外れたかのように心臓が激しく脈打ちだす
先輩が、話していた内容をどこかで聞いてしまったのだろう怒りん坊上司が冷気を含んだ言葉を私の体へと突き刺し始める
脳が危険信号を発令する
目の前の椅子に腰掛ける彼の不機嫌そうな表情がこれでもかというぐらい歪みを見せる
ローズハートさんの綺麗な朱色の髪の毛が揺れ動くのを目で見送ると同時に彼からの問いかけに戸惑い言葉を詰まらせる
はっきりとしない思考回路に、はっきりとしない声が漏れる
だって、実際のところ私はローズハートさんに遊ばれた可能性があるじゃない?
その拭っても消えない事実があるせいなのか、取り繕うことさえできなかった
「…そう」
そんな私の態度に痺れを切らしたのだろう、ローズハートさんは何かを考える素振りを見せた直後に会話に終止符を打つ
そして
「2週間後の休日、君の予定を空けておいてくれ。迎えに行く」
そう一言だけ残し、部屋から出ていってしまった
残された言葉と脳裏に残る朱色だけが自身の目に映えた
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砂時計(プロフ) - 葵さん» 初めまして!コメントくださりありがとうございます!!可愛いですよねっ、描いてくださった友人のイラストを褒めてくださりありがとうございます!リドルさんの素敵なところをお届けできるように頑張って書いたのでそう言って頂けて嬉しいですっ!! (2021年7月23日 12時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - チーズ鍋さん» この度はお返事が遅くなってしまいすみませんっ私のお話を読んでくださりありがとうございます。私なりに綺麗な世界観を見せたいと思っていたのでそのようにお褒めいただけて本当に嬉しいですっ!!本当にありがとうございましたっ。 (2021年7月23日 12時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - うおおおおぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!かわぇぇえええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………うるさいですよね。すみませんでした。ほんとリドル君スキッ! (2021年7月19日 15時) (レス) id: 4534ab9975 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ鍋 - 言葉選びが素晴らしく、本当に綺麗な文章でした。話の内容も面白く、しかも読みやすいので一気読みしてしまいました。この作品と出会えて良かったです。ありがとうございました。 (2020年10月16日 22時) (レス) id: 067328da22 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - バカさん» この作品を最後まで読んでくださり本当にありがとうございます!!初めてに私の作品を選んでいただけて大変嬉しく思います(><)お褒めの言葉本当に感激ですっっ!!他の作品でも貴方様にお会い出来ることを願っております(;_;)!本当にありがとうございます!! (2020年9月23日 1時) (レス) id: 47df7c7bae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂時計 | 作成日時:2020年8月18日 3時