手のかかる後輩くん【二口堅治】

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「さ、さっさと自主練習始めるよっ」


はやく、帰りたいんだから




笑い声が収まる様子のない彼に

ボールのはいったカゴを取りに行こうと背中を向ける




そんな私の機嫌を伺うかのように言葉を繋ぐ後輩





「えー、先輩怒りましたー？」

「すみません」

「怒ったままだったらシワ増えますよ」





最初は素直だったのに


だけど
やはり彼は一言余計なことしか言わない


生意気な後輩だったようです。





「いってぇ！？」


「…ふん」





私の後ろ姿を足を進めながら追ってくる二口に




またまたいらっとしたので

手に持っていたバレーボールを彼の顔面に向けて投げてやった




軽めに投げたから大丈夫



と、思いながら



壁付近に置いてあったボールカゴを放置にし
痛いとしゃがみ込む後輩に近寄る。







「…、はやく、スパイクの練習するんでしょ」

「…トスあげるから立って」




肩をトントンと叩きながら

しゃがみ込む後輩に声をかけるが




「……」



反応がない。



そんなに痛かったのかな
大事な選手に怪我をさせてしまった


と、不安の色が思考に見え隠れする



眼鏡の縁にかかる前髪を払いのけ

同じように彼の目の前にしゃがみ込み




「…ごめん。顔、見せて」




熱を込めた彼の腕へと触れる


隙間から見え隠れする

彼の意地悪そうな目と絡まる視線





「っっ！」



脳が危険信号を鳴らし始める

が、時すでに遅く



掴まれた腕と
自身の体にのしかかる二口の熱


若干、押し倒されているような構図のなか

マスクへと伸ばされる後輩の綺麗な指




全てが私の鼓動を加速させる。




「だ、だめっ…っ」

「先輩の素顔、見てみたかったんですよね〜」




こいつの様子が可笑しかったのはこういうことだったのか



いままでの事を脳裏で思い出しながら
奴を睨みつけると



「そんな目で見てもやめてあげませんから」



いつものように
にやっと笑みを漏らした。



人には他人に知られたくない秘密が一つはある



それを隠すためなら

ごめん、茂庭。私マネージャー失格かも




と、内心で謝罪会見を開き
すぐさま、彼の鳩尾を思いっきり蹴った。

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