手のかかる後輩くん【二口堅治】

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「…っ、俺帰ります…ね」



ばっと

私から離れる二口



開放される身体

心地よかった体温が離れていく。



机に先ほど私から取り上げた眼鏡を置き去りにする。






「…っま、まって！！」



苦しそうな顔で
立ち上がる彼の腕を反射的に掴む



制服のブレザーにシワが出来る



でも、そんなこと
いまの私には考える余裕はなく



涙で視界がぼやける

溢れそうになる雫を我慢しながら




大きな声をあげる。






「ちが、うっ」



彼に

この声を
この言葉を届けたくて



無我夢中で叫ぶ



後輩の後を追うように自分も立ち上がる。



無意識に言葉を制限していたマスクを剥ぎ取り








「私…っ、二口のことが好きなのっ！」




今まで躊躇っていた

このマスクを取り捨て



涙で歪む、目を大きく開け


言葉を繋げた。





「マスク取られるのは顔で選ばたくなくて…」

「二口には私を見てもらいたくて…っ」




傷つけてごめん。




嗚咽と共に思いを並べる。

届かなくてもふられてもいい。



ただ、二口にこのまま嫌われたままなのは嫌だった。




静かになる、室内
無機質な時計の針だけが存在を主張する。



彼の反応が気になって

足元にあった視線を上へと向けると






「先輩ってほんとずるいですよね」



口を尖らせて
頬を少し赤く染めた彼の顔が目に飛び込んだ。

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