手のかかる後輩くん【二口堅治】

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「ふ、ふた、…っ！」


「俺だって男なんですよ？」

「先輩、俺のこと甘く見すぎです」




押し倒されたまま

二口の名前を呼ぼうと口を開いた瞬間




顔を歪ませた彼が
苦そうに言葉を吐いた。



好きな人に
こんなふうに押し倒されることも


こんなふうに至近距離になることも



いままで経験したことなかった私



尋常ではないぐらい
胸が締め付けられて苦しい



頬が熱くなるのを感じる。








「前まで勝手に俺のこと避けてそれで問い詰めたら泣くし」

「前までの先輩後輩の関係に戻ろうとしたら近寄ってくるし」



「なにがしたいんですか」





「あ、…っ」



言葉が私へと向けられる

その直後一瞬、目の前の二口の顔がぼやける。



数分経つと目が慣れてきてまたクリアに映る。





その彼の手には
今の今まで私の目元にあった眼鏡。




「か、えしてっ！」


彼の冷えきった視線が

怖くて



緊張で震える声を大きく吐き出した。





彼をこんなに怒らすつもりなんかじゃなかった



ただ前みたいに笑い合いたいと思っただけなのに。







弱くて
情けない


そんな自分が腹ただしくて



悔しくて、


やっぱり下唇を噛み締めたけど






「…泣かないでくださいよ」




頬を伝う雫は我慢出来なかった。





あなたが好きなの




その一言が伝えられたら
どれだけ楽になれるのだろうか？

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