その花が咲くとき【文豪ストレイドッグス】 (ページ5)

今日:10 hit、昨日:13 hit、合計:64,307 hit

第四話ページ5

Aは自室につき、席に着いていた

書類仕事を片付けなくてはいけないが、いつもの通りやる気が出ない

大きい溜息をつき、頬杖をつきながら、ぺらぺらと書類を捲る

その時、部屋の扉が大きな音を立てて空いた

『ノックって知ってますか、中也さん』

扉を開けたのは直々の上司である中原中也であった

「くっそムカつくっ！」

Aの言葉を無視して、ズカズカと部屋に入り、彼女の目の前の椅子に座った

『どうしたんですか』

「嫌がらせされた」

『誰に？』

「放浪者」

Aは先程までぺらぺらと書類をめくっていた手を止めた

『太宰さん？』

「…あぁ」

『どうして…』

Aは、以前いきなり姿を消した同僚の顔を頭に浮かべる

「わざと芥川に捕まって、情報収集しにきたらしい」

なんとも太宰治という男らしいやり方だと思い、彼女は小さく笑った

「何がおもしれぇんだ」

その小さな笑いを見逃さなかった中也

彼女は直ぐにきつく口を結び直した

「…これから、忙しくなるぞ」

中也はそう呟き部屋を出て行った

彼は時折感じていた

自分の元相棒と部下であるAの思考はたまに似ているところがあると

その所為か、元相棒とAが打ち解けるのはそう時間はかからなかった

自分よりも部下と親しくしている元相棒が気に入らなかった

そして、ついさっき元相棒の話に、笑みをこぼした部下もなんだか気に入らなかった

『なんかいつもより機嫌悪いな』

Aの独り言だけが部屋に残った