その花が咲くとき【文豪ストレイドッグス】 (ページ3)

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第二話ページ3

「うーん…なんとも不可解な死だね」

森鴎外は知人である老父の遺体を見ていた

場所はある屋敷の寝室

屋敷の女中が鴎外に連絡を入れ、今に至る

寝室の扉の近くには女中とひとりの少女がいた

遺体は顔と衣服から出ている手足の所々に切り傷があった

切り傷から伸びる血管は黒く浮き上がっていた

女中曰く、老父と少女が部屋には居て、女中が来た時には、既に老父は亡くなり、その側で少女はひとり怯えていたそうだ

何故、なんの関係の無い老父と少女が一緒に寝室にいたのか、その理由は濁されてしまった

そこに和服を着こなした男と、少年が入ってきた

「福澤殿」

鴎外は和服姿の男に声をかけた

この福澤という男も老父の知人のようだ

福澤も遺体を見るなり顔をしかめる

「判るか、乱歩」

福澤は隣にいる少年に聞いた

「彼を殺したのは彼女だ」

乱歩と呼ばれた少年はいとも簡単に謎を解き明かす

加えて云う

「きっと彼女は異能力者だ。自分でも今日気づいたようだね。そうだろう？」

乱歩は少女を見る

少女は額から脂汗を流しながら、重い口を開いた

『おじさんは、私の服を脱がそうとした。

私は厭だと、云った。だけど、おじさんの青く血管が浮き上がったゴツゴツした手は、止まらなかった。

私は逃げようとした。だけど、逃げられなかった。

必死に逃げようと手を伸ばしたら、小さいナイフがあった。

私は其れを握って、大きく振りかぶった。

そしたら、おじさんの顔に傷がついた

おじさんは怒った。

ナイフはどういう訳か、私の顔の横に突き刺さった。

そしたら、いつの間にかおじさんと私を赤いお花が囲んでいた。

私もおじさんも驚いた。

おじさんは花を手で払った。

払えば払うほど、おじさんの手は傷だらけになっていった。

そしたら、おじさんは私を殺そうとした。

首に両手を当て締めようとしてきた。

けど、段々と力は弱まって…

死んじゃった。

おじさんのゴツゴツした手の浮き上がった血管は、黒かった。

今はもう無いけど、顔にもお花が咲いていた。

赤いお花。

お墓の近くによく咲いているお花。

私が…殺したの…？

そんな…そんなつもりなかった。

ただ…怖かっただけ

こわ…かっ…た…』

少女は云い終えるとその場で倒れた