WILD DOCTORS 16

お母さんの中には ページ45

「お母さん、お兄ちゃんってさ…」

「どうしたの？
ずっと話してなかったのに急に。」

「話せないのは、あの人が嫌な顔するからでしょ？
私はずっと二人の事気になってるよ。
お父さんとは離れても、お兄ちゃんはお母さんの息子でしょ？
気にならないの？」

「気にはしてる。
だけど、もう別の道を歩いてる。
だからどうしようも無いの。」

「お母さんとお父さんって、どうして別れたの？」

「もうやめなさい。
今の美咲のお父さんが、お父さんでしょ？」

「でも、お父さんもお父さんだもん。
それにお兄ちゃんだって。」

「こんなふうに、個室に入らせてもらって、何故か理由も言わないのに、いつまでもこうしてここにいられるのは誰のお陰が考えなさい。
仕事も、今回の火事の影響で減ってて、お父さんも大変なの。
わがまましてないで、早く転院して足を治しなさい。わかった？」

「…。
もういい。」

「また、すぐそうなる。
お母さんを困らせせないで。
また明日来るから。」

「来なくていいよ。
あの人の事、手伝ってあげて。」

お母さんの中には、もう、お父さんも、お兄ちゃんもいないんだ。
小さくてわからなかったけど、お母さんが離婚したいって言い出したのかな？
だとしたら、あの人と知り合ったから、離婚したいってなったのかな？

✲✲✲✲✲

あ、いたいた、美咲の嘘つき親友ちゃん。
随分怪しげな奴らとつるんでるんだねぇ。
美咲の連れをみてたら、行き着いた小さなクラブ、安い酒とドラッグの温床みたいなところ。
若くて金の無い奴らが、粋がってたむろする場所。
店々に、そこをアジトにするグループがいて、どうやらここはそいつらのテリトリー。
ここでは俺はもうおっさんだ。

「美咲、頑張ってるようだな。」

「うん、でも親の会社の倉庫が火事だとかで、長くはいられないかもって少し焦ってたみたいですよ。」

親友ちゃん、悪い子だね〜お話しちゃうんだ、そいつらに。

「使えるうちは使う。
それに、あの火事はわかってた事だから、なぁ？」

その男は隣にいる男に話しかけてる。

「よく燃えたよなぁ。
周り家具とかで木が多かったからかなぁ。」

やっぱりお前らが火をつけたんだな。

「おっさん、見かけない顔だね？」

おっさんって誰？
かーくんまだお兄さんじゃだめかな？

「まだお兄さんくらいにしといてよ。」

「何者？
縄張り知ってて来たの？」

「通りすがった人は入れない店なの？
それならそう書いとけや。」

「…んだと。」

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