WILD DOCTORＳ 3

強さに裏付けされた笑顔 ページ36

「将ちゃんどこ行くの？」

「いいとこ。」

車椅子を押してる将ちゃんはニコニコしてる。

「ほら！下見て！｣

見ると花時計が花壇に作られてた。
車椅子からだと一部かけるけど、花のいろんな色がとてもきれい。

「全部見える？」

「うん、すごくきれいなんだね。
　時計になっるの知らなかった。」

「この階から見るのがいいって、こない
だ看護師さん達から聞いた。
これより下だと見にくくて、上はこの場
所が使われてて見えないんだって。
月？聞いてる？」

将ちゃんに抱き上げられた。

「ほら、ここなら全部見えるだろ？
　下のとこハートがあるの。」

「ホントだ。可愛い。」

ちょうど車椅子からだと死角になる部分に2つのハートがあった。

「これ、院長の発案だって。
患者さんの為で、病気でも恋をしようっ
て。」

「院長が？イメージ無いね。」

「だから、月もできるんだよ。」

将ちゃん…、もうその辺でやめて…。
お願いだからやめて…。

「オレ…向こうで苦しい時に、いつも月は心の底で俺を待ってるって思ってた。
そうしないと負けそうだった。
最初は英語でまくしたてられて、専門用語含めて訛りや独特の言い回しやわかんなくて…。
英会話程度じゃついていけなくて、最後の縫合と糸切りばっかやらされて…。」

｢土田先生もこのプログラムを受けたって
話してくれた。
かなり厳しかったけどいい経験になっ
たって…。
将ちゃんもそれを超えてきたから、こん
なに素敵になったんだね…。｣

｢一度も帰ってこなかったのは、日本で月
に会っちゃうと、もうアメリカに帰れな
くなるから。
弱いから、わかってたから…。
でもすげー逢いたかった。
日本に帰ったら最初に逢いたかった…。
行く時も帰った時も空港で月を探して
た。」

苦しい…こんなの苦しい…。

「将ちゃん…降ろして…。
　お願いだから降ろして。」

将ちゃんはそっと車椅子に私を降ろしてくれた。
だけど手すりを持ったまま前に腰を下ろした。
これじゃまともに視線が合う。
真っ直ぐに見つめられたらそらせない力強い視線…。

将ちゃんは優しく笑った。
何でそんな風に笑えるの？

「俺、気持ち少しも変わってないよ。
少しは大人になったし、医者としても成
長できたよ。
でも、月のこと好きなままだよ。
伝えたかった。」

そのまま立ち上がると優しい優しいキスをくれた。

「なんで泣くの？
　月のその涙はなぁに？
　俺に教えて。」

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