それでもお兄ちゃん

愛ちゃんの涙 ページ9

愁は将兄と仲がいい。
誰にもあるように、人生の分岐点で、二人はそれぞれの道を決めるキーパーソンに巡り合った。

愁はお祖母様に、将兄は、プロデュースしてくれているギタリストに。
そして道を分けたけど、私を通して、今度は義理の兄と弟になった。

「愁平！サンドイッチ無くなるぞ！」

「おぅ！お前が食ったんだろ？」

中へ歩いていきながら、タバコを分け合ってる後ろ姿は変わらない。

将兄はデビューして、最近は雑誌やテレビで時々見かける。
今も伊達眼鏡なんかしてる。
時々実家に帰ってきてて、一緒にお買い物行ったりすると、若い女の子に気づかれて、サインしたり握手したりしてる。

愛ちゃんは、今は事務所の人から一緒に歩くのを禁止されたりしてる。
寂しいだろうな。

「愛ちゃん大丈夫？」

部屋の中、隅っこに座ってぼんやりしてる愛ちゃんに声をかけた。

「ん？なにが？」

愛ちゃんは首を傾げる。
童顔もあるけど、雰囲気が若い。
月姉と同じとは思えない。
月姉も童顔だけど、更に上を行く。

「将兄のこと。」

「あぁ、でも辛い時も、嫌なことあっても頑張ってるの見てると、応援するしかないんだよね。
それに、絶妙に甘え上手で…負けちゃう。」

って言った後、

「好きだから仕方ないよね。
　それでもそばにいたいもん。」

って優しく笑った。

将兄、もったいない、こんないい人。
シスコンのくせに。ヽ(`Д´)ﾉ

その将兄の甘える月姉は、来たいと言ったけど、ドクターストップで来れなくて、お花と弔電が健一君と連名で届いていた。

会えると思ったのになぁ。。。
将兄はムスッとしてたけど、愛ちゃんをもっと大事にして！とハラハラする。

今もここが終わったら、すぐに仕事に戻るらしく、事務所の車が待ってる。
芸能人って大変だなぁ…。

「ばー様には言っといたけど…謝っといてな。」

後ろ髪ひかれながら帰っていく将兄の背中を、手を振って笑顔で見送る愛ちゃんは寂しそうだった。
…ごめんね、愛ちゃん。

頼りになる男→←大きく強い愛情深い人

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