それでもお兄ちゃん

置いていかないで ページ48

「月、明日一緒に行きたいとこがある。
　付き合ってね。」

「うん、どこ行くの？」

「秘蜜。」

「明日は着くまで目隠ししておくね。」
.
.
.
月をやっと連れてこれた♪
迷惑掛け通しのだめ夫からのブレゼント。
まず一つ目

「はい、目をあけて。」

「え？なに？どなたのお家？」

車椅子の前に座ると月の手をとった。

「俺達のお家にする。
っていうかしちゃった。」

「え？お仕事は？ドッキリ？」

「日本で起業する。
帰ろう、月。
実は用意してたの。
将吉に頼んで色々と。」

本家から車なら五分もかからない。
小さいけど庭のある天井高めの平屋。
空き家を買ってリノベした。
家の中も車椅子でラクに家事もできる。

「キッチンはまだ途中。
　月に決めてほしいから。」

「すごい…ね。」

ぼかーんとしちゃってる。

「どお？ここリビング、暖炉作っちゃった。それからこっち寝室、で、ウオークインクローゼット。
ロフトは物置き代わり。
こっちは客間かな。
で、あっちが職場。」

「お家で仕事してくれるんだ。」

「その方が月が安心でしょ？」

天井にはファンが回ってる。
新しいから木の匂いが満ちてる。

「ベッドや他の家具もこっちで買う。
　持ってくるのは身の回りのものだけ。」

事務所は明るくてこじんまりとしてるけど、使い勝手はいい。
基本一人仕事だからこれで充分。
机買わなきゃ。
奮発しちゃお。

二人にとって居心地のいい場所に。
病院も愁君に相談したらやはり前に月の診て頂いていた先生がいいらしくて、その手続き等も愁君が
お役に立てますといってくれた。

あとは良平にだけは伝えておいて
あちらで準備を進める予定。

「準備の間、月はこっちで待ってて。
無理しないで用意してくれててもいいし。」

返事がないから顔を覗き込んだ。

「私も帰る。
　健一と帰る…。」

泣いちゃいそう？

「余計な体力使っちゃうと、せっかくこっちに来てもまた寝てることになっちゃうよ。
オレもあっちでは動き回って、そばにいてあげられない日もあるし…。」

「面倒なら施設に入れて。
　置いてかないで…。」

「違う、違う…。
ここに住むためだよ。
置いていくんじゃ…」

「やだ…。
離れるのやだ…。」

泣かせちゃった…。
喜ばせるつもりだったのに…。

「月、泣いちゃだめ。
　負担かかるから。
　また痛くなっちゃうよ‥
　わかったから泣かないで。」

負担かかると吐血しちゃう…。
月を抱きしめて話をやめた。

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