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妻の腕の中 ページ44

本家が見えたらほっとした。
知らず知らずのうちに肩に力が入ってた。

「ただいま。」

玄関を開けると兄嫁が

「おかえりなさい。
 少し待って。」

と優しい声で言いながら塩をして清めてくれた。

「ずっと寝てるの。
お昼もまだだから、軽く食べるなら作ってあるからね。」

どうしてここはこんなにも暖かいんだろう。
月達のご両親に会いたくなった。

「ただいまぁ。」

部屋に入ると妻は寝ていて、穏やかな顔に何故か泣きたくなった。
ベッドの横に座って、起こさないよう下を向いて声を殺して泣いていたら起きたみたいで
横に来て膝立して俺を包み込んだ。

「おかえり健一。
 悔しかったね。辛かったね。
 よく我慢したね。」

「泣かすなよ…ばか。」

余計に泣けてひとしきり妻の腕の中涙を流した。

「涙終わりみたい。」

「じゃあまたためないと。」

微笑んだ妻を抱きよせた。

「少しはラクになった?」

「うん、オレ、泣きたかったのか。」

「きっと肩に力入れて、歯を食いしばって、拳の中に涙のもとを握りしめてたんだね。
健一ひとりにそんな思いさせてごめんね。」

ホントなら一緒にいてくれるはずのないことを母にされたのに…。
きっと今でも消えない記憶が妻の心に焼き付けられてるのに…。
どうしてオレの実家になん気を使ってくれるのか…。
俺の甘えを全部許してくれるのか…。

あの日、この家に良平を訪ねた時、まだ帰っていない兄の初めて来友達の俺にジュースを入れてくれた妹さんが心から消えなくて…。大学に入って告白した。
体が弱くて大人しく従順な彼女をないがしろにして、他の女性と遊び歩いたりもしたのに…。
全部許して待っててくれた。
優しい思いやりに溢れた月を手放したくなくてフランスに連れて行った。

そのことで余計に体を悪くして、今、彼女は苦しんでる。
それでもなお、他を労るこの人を選んで良かったと心から思う。

暖かい妻の腕の中だけは涙を流せる場所であり、安らげる場所。
だから神様まだ呼ばないで。
俺から安らぎを奪わないで。

「スーツ着替えてね。」

「どれ着るの?」

「これとこれね。」

着替え終わるといつも

「いい男完成。」

って満足顔で言ってくれる。
ベッドに座ってた妻の頬を両手で挟んでキスをした。
止まらなくて長い長いキスになった。

「日本には狼さんは連れてきてないよ。」

「おかしいな?
 さっき会ったよ、そこで。」

笑い合ってもういちど…

「しなーいの。」

時々意地悪な妻も好き。

コウノトリ再び→←お祖父様の法事



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みお(プロフ) - つくよみさん» つくタン(は〜と) どんまいギュ~ウヾ(≧∇≦) (2019年3月10日 19時) (レス) id: 3dd427fe94 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - つくよみさん» モォかなり笑わせてもろたょ(´V`)♪ 大喜利王健在でしたね(笑) でも天然発言のGSさんには勝てないかも(笑)( ^o^) 本人ぼけるつもりなく真面目に言ってるから余計にツボにくる(爆)(^^*) サバゲー配信も楽しみ(=^..^=)ミャー (2019年3月10日 10時) (レス) id: 3dd427fe94 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - ニャイ(=゚ω゚=)可愛い(*⌒∇⌒*) (2019年3月10日 10時) (レス) id: 7bd6b3fcc4 (このIDを非表示/違反報告)
つくよみ(プロフ) - みおさん» よっ!LDHの大喜利王! (2019年3月10日 7時) (レス) id: 582338d1af (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - 黒木蓮(Kuroki・Len)さん» 妊婦さんにはストレス厳禁、笑って過ごせるのが何よりだねo(^▽^)o 皆の変わりに説教しといたからね!(≧∇≦*)  (2019年3月10日 6時) (レス) id: 3dd427fe94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月詠 | 作成日時:2019年2月27日 6時

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