それでもお兄ちゃん

時の流れる速さの違い１ ページ34

二日目、みんなが仕事が終わる頃、また居間には大勢の人。
子ども達は啓司さんの店に集められ、大樹にゆきちゃん、愛ちゃんがみてくれる。
その日は忙しい中、将吉も来てくれた。

「バンド絡みなら、俺も来ないとな」

健一さん月さんはマイクの向こうで聞いてて言いたい時は発言するスタイル。

指定された時間きっかりに瀧本みきは愁太を連れて現れ、大樹、ゆきちゃん、愛ちゃんが
子どもたちを連れて啓司さん宅へ行き、入れ違いで啓司さん夫婦が来てくれた。

みんなの視線を浴びながらも、瀧本みきはまっすぐ顔を上げて時々みおをじーっと見る。

「なんでみおだけ見るの。
　なんかやだよ。」

小さい声でそう言うと、みおはそばにいた絵美姉さんにくっついた。

「もう一度言う、あれから何回考えても、オレは君と子供ができるようなことはしてない。
断言する。
だから愁太は俺の子じゃない。」

「鑑定したらわかるからね。」

啓司さんの声に

「そんな事わかってるからしなくていい。」

「じゃあ君の目的は？
　子供を使って叶えたい事は？」

「簡単には教えないわ。」

「目的が言えないなら話は進まないでしょ？皆さん大切な時間をあなたの話を聞きに来てくれてるの、わからない？」

絵美姉さんが声をあげる。

「私は愁平君とみおだけ来たらそれでいいのに、勝手に大勢来たんじゃない。
野次馬？
家族家族ってバカじゃないの？」

「お前はみおに何かあるんだな？」

哲也さんの声に女が笑う。

「馬鹿だけじゃないんだ。
大家族って教育端まで行かないから、馬鹿か不良しかいないと思ってた。」

「浅はかな考えのバカはあなたよ！」

雪花さんが眉値を寄せる。

「私はあなたなんか知らない。
　瀧本みきっていう名前も。」

「みおちゃんが困ればいいだけの愉快犯なの？」

月さんの声にみおは目に涙を浮かべた。

「あたり。」

「私あなたに何かした？」

「自分で考えたら？
兄姉に頼ってばかりいないで子供が一人出てきたぐらいで野替愁平の妻がオタオタして情けない。
成り上がりはそんなもんよね？」

「子供一人がって言うけど、命一つなんだ、ヲタつくだろ。
そんなことのわからない女は、介護する人の癒やしを考える男の妻にはなれねーよな。」

将吉ありがとな。

「何回顔変えたの？」

健一さんの声。

「声だけさんなのにわかるの？
　賢いのね。」

顔を変えてる？

「みお、声聞いても思い出さないんだね。」

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