それでもお兄ちゃん

お兄ちゃんは一人じゃない ページ26

愁の代理の仕事中、何度もスマホを見るけどメールは無い。
帰りの車の中、心配が増加した。

母親が見つかって、忘れていたその人を思い出して話が弾んじゃったり…してないよね。

近くのスーパーの前で信号待ち。
運転手に言った。

「ここで降ります。
　今日はご苦労様でした。」

「ご自宅まで送るよう社長に言われておりますので…。」

「そういう事にしておきますね。
　いつもありがとう。」

久々に寄ってみたかった小さな古いスーバー。
場違いな服装が浮いてたけど、知ってる人もいないから構わず見て歩いた。

本日のお買い得シールや割引シール、マジックで書き換えられた値段。
お惣菜やコロッケが懐かしい。
なんだか買ってしまった。
家についてコロッケを食べた。

「美味しい…。」

グスングスン泣きながら懐かしい味のコロッケを食べた。
月姉に会いたい。
話聞いてほしい。
なんでそんな遠くにいるの？
すぐに行けないじゃん(´Д⊂ｸﾞｽﾝ

＊＊＊＊＊＊＊＊＊

駅を降りて本家に向かう途中、声をかけられた。

「愁平！」

哲也さんだった。
自転車に乗り俺たちの横で止まる。
ちび愁は

「こんにちは！」

と挨拶した。

「偉いな、こんにちは。」

優しい笑顔で返したけど、どこか冷たい。
らしくない。

「まま探してるんだって？」

「はい、早く返して終わろうと。」

その時ちびが

「パパ、本屋さんにいていい？」

近くの本屋を指さした。

「おお、気をつけろよ。」

そう返した俺に哲也さんは

「やめさせろ。」

冷たい声で言った。

「え？」

「パパじゃねーんだろ？
ならあれを直させろ。
万が一みおが聞いたらどう思う？
これ以上傷つけるな。
可愛そうなのはわかる。
だけど１番にみおの気持ちを考えてやれ。
そうしないといなくなってから慌てても遅いからな。」

哲也さんっ子だったとみおから聞いた。
頭が良くてかっこよくてだけど心も男前、モテて当然か。

「気をつけます。
　言ってくれてありがとう。」

「わかれば問題なし。
　早く見つかるといいな。
　また遊びに来てよ。
　灯里もまた少し大きくなったから。
じゃあね。」

颯爽と自転車で走り去った。

みおの気持ちを１番に。
ホントだ。
嫌だよな。
直させよう。

本家でちび愁と別れ、鰻を渡し、洋食屋で話をし、ここでも渡した。
絵美姉さんに軍資金のお礼を言い、うちに帰った。

｢みお、今帰ったよ。｣

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