それでもお兄ちゃん

対面 ページ21

「愁太、ママに会いたくないか？
　このままおじさんちの子になるのか？」

良平さん…？

「僕はパパんちの子になる。
　パパに会わせてよ。」

「わかった。」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「こんにちは。」

「あら、愁君いらっしゃい。」

「絵美姉さん、みおは？」

「上にいるよ、どうぞ。」

「みお、ちょっといい？」

「うん。」

「良平さんから電話あって、俺今からあの子に会うんだ。
みおに言っておこうと思って。」

「うん、わかった。」

「みお、俺はみおだから。
何があっても、何をしても、ここにいるのはみおだから。」

愁は拳で胸を叩いた。

「愁ごめん！びっくりして、どうしていいかわからなくて…。
ホントならあの子とお母さんを幸せにしてあげなきゃって思ったのに、でも愁と離れるの
嫌で…。」

愁に抱きしめられた。
愁の匂いがした。

「馬鹿だな。
　ありもしない事で泣くな。」

「ごめんなさい。
　帰る、うちに帰る。」

「うん、じゃああの子に逢って話したら迎えに来るから、準備しといて。」

「うん、早く来てね。」

階段の下、啓兄と絵美ちゃんが顔見合わせて笑ってたことは知らなかった。。
.
.
.

「俺が野替愁平。
　でも、君のパパじゃないんだ。」

その子はきょとんどした顔で

「ママがパパだって言ったよ。
　だから僕のパパなんだよね？」

「でも、違うんだ。
名前は？」

「愁太、ママはみあ。」

「今まではママと住んでた？」

「うん。」

「ママの写真とかないか？」

「ない。」

「どんなとこに住んでた？」

愁太は首を傾げて考えている。

「んーとね、海のところ。」

「海…知らねーし…。
愁太、俺とママを探そうか？」

「パパとママを探すの？
　うん！やる！」

探し出してなんでこんなことするのか聞いてやる！
それでこの子を返す。
子供を道具に使うなんて間違ってる。
一言言ってやる。
.
.
.
「みお、ただいま。」

そこには絵美さんと啓司さんが待っていて、
その真ん中にみおがいた。

「会ってみてどぉだった？」

「ほんとに知らない子で。
腹立つんで一緒に母親探して、突っ返すことにしました。
子供を道具にするなんて一言言ってやるって。」

啓司さんは黙って俺を見てた。

「その間みおちゃんは？」

絵美姉さんは、みおの背中に手をおいて聞いた。

「寝るのは本家で、迎えに行って、夕方別れます。」

「みおちゃん、それならいい？」

絵美姉さんに聞かれてみおは頷いた。

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