それでもお兄ちゃん

とばっちり ページ16

「月、大丈夫か？」

「健一、おかえりなさい。」

首に腕を回して抱きついてくる妻、嬉しい瞬間。

「びっくりしたな、落ち着いたか？
　あっちもバタバタみたいだ。
　相手の女はみあって言うらしい」

「なにそれ？みおちゃん可愛そう。
　だけど愁平君は否定したのよね？
　それなら違うよね？」

「遊んでる男ならありえるかもよ。
愁平君は将吉とバンドしてて、人気あったろ？
何人も相手にする男って、本命の彼女と似た名前の子を遊びにするの。
そしたら万が一寝てる時とかに名前呼んでもごまかせるでしょ？」

妻の手が下がった。
え？なんで？これからくっつくんでしょ？

「それ、健一のしてたことでしょ？
　学生の時、遊んでたもんね？」

布団に潜り込んでしまった。

「誤解だよ、そんなわけないじゃん。
　ねぇ月？月子？仲良くしよ。」

「しない。
思い出しちゃった。」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「愁平も否定したなら、警察に届けりゃいいんだよ。
なんで本家で預かるわけ？」

「哲也も気をつけてよ。
明日は我が身じゃないの？
哲也の場合は、納得しそうだもん、みんな。」

「どういう意味だよ！
　完全にとばっちりだろ？」

「灯里、一途な人と結婚してね。
　モテる人はやめなさいね。」

「なんだよ…灯里は結婚しないの。
　変な男にやれるか！」

「日記帳買ってきて、ここに思い出を綴ろうとか、あまーいこと言う人はやめようね、灯里。」

「それにうっとりしたの誰だよ！
　マジで被害受けてる、オレ。」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「けいたんは無いよね？」

「なにが？」

「モテたって聞くし、元カノさん、この辺に住んでたりとかあるし。」

「は？無いに決まってんだろ！」

「何で水こぼすの？
　焦ってるんじゃない？
　ますます怪しい。」

「なっ、これは手が滑ったの！
　オレは絵美一筋、知ってんだろ？
　結構真面目だよ、オレは。」

「信じてたけど、水落としたのはちゃいだったよね。残念だ。」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「良平さんが父親は無いよね？」

「なわけねーよ。
　オレずっと八百屋なんだぜ？」

「でも、黒沢家のDNAだからなぁ。
　皆さんモデるし。」

「無いってないない。」

「そういうことにしましょうか。」

「なんだよ、しなくてもそうなの！
　マジで無いからな！」

とばっちりの黒沢家の面々。
でも、妻達はみんな、ホントは夫を信じてます。

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