WILD DOCTORＳ

知りたいは恋の証 ページ35

「月子、これ読んどけ。
　これからのこととか書いてある。
　あと…念の為、レントゲンと
　心電図、眼科行け。
　データは俺宛な。」
冊子を渡してそれだけ言うと
さっさと背中を向けて去っていく。
「せっかち直人。」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「篤志さん！待って！
　ねぇ？なんの話なの？
　秘密漏洩とかなぁに？」

黙ったまま前を向いて歩く篤志さん
私の手を握る力は強い。

「離して、いたいから。
　痛いってば！」
振り払うと振り返った。
「ごめん…。
　うち帰ったら話すから
　少しの間我慢してて。」

車の中は終始無言でいつもなら
たくさん話す場所なのに
隣にいる篤志さんが遠い。

学生みたいな告白なんて無かった。
大人の篤志さんなりの
こちらも大人の あ・うんの呼吸
で恋を初めて、今は一緒に住んでる
友達や周りの人は近い未来に
結婚するって思っていて、
篤志さん自身もそんなことを口に
することもある。

だけどそんな篤志さんは
私の働く病院の理事のひとりで
ホントなら話もできない人。
そんな人と結婚なんてできるの？
ご両親にはご挨拶した、
まだ付き合いたして間もない頃
とても優しく接して頂いた。

お父様が元々院長の知り合いで
理事になり、それを篤志さんが
継いだみたい。
噂では将来篤志さんが理事長に
なるんじゃないかって言われてる。

＊＊＊＊＊＊＊＊

ふたりの部屋についた途端
篤志さんがキスして来た。
いつになく少し乱暴なキスで…
あまりそういうのないから
びっくりした。
いつも大人で穏やかな篤志さん。

「どうしたの？」
「ゴメンな、雪花。
　嫌な思いしたよな。
　今日のことは忘れて。
　もうこんなことないから。」
忘れてって…そんな…無理だよ。

私を抱きしめて話す篤志さんは
いつもの香りがして抱きしめ方も
いつもと同じ。
「私達…結婚するんだよね？」
「そうだよ、ずっと一緒に
　いてくれるんだろ？」
「それなら…全部知りたい。
　篤志さんの全部が知りたい。
　不安にさせないで。
　全部で旦那さんを好きな花嫁
　さんで嫁ぎたいの。」
「全部知っちゃったら恋は終わり。
　ドキドキしなくなる。
　退屈が恋をだめにする。
　知りたいは恋してる証。」

結局話はそのままで…
ベッドに場所を変えられたら
篤志さんの圧倒的優位で
何も聞けなくなった。

離れたくない、離れられない、
素敵すぎる恋人。

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