WILD DOCTORＳ

夕陽 ページ32

あの後部屋の外でガタンと
音がしてはっとしたら動けたので
椅子を立つ。
クスッと拳を口元に当てて
笑う寺辻先生はいつもの表情。

「どうしたの？
　まるで僕が先生に悪い事
　したみたいに誤解されるから
　意地悪だな。」

悪いこと…したじゃない。
髪に触れて…前みたいじゃ
すまないって…
違うの？私があまりにツライから
ほんの少し寝てしまったの？
半分眠ってたから意識朦朧？
そんな夢？

「じゃあ気をつけて。」
立ち上がった先生は部屋を
出ていくとき
「次は容赦ないよ。
　だって君はそれを待ってるから」
そう呟いた。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

きれいな夕焼けだな。
陽も見てるかな…。そうだ！

スマホを出して写真を撮った。
これ、メールしてきっかけ作ろ。
って俺なんで彼女と話すのに
きっかけなんて考えてんの？
中学生か？(笑)

「きれいですね。」
振り返ると月先生。
「うん、今日は特にきれい。
　この部屋サンセットのベスポジ
　見に来たらいいよ、将吉と。」

「え？知ってたんですか？」
「中庭デートしてたじゃん。
　あの後将吉捕まえて聞いたの。」
だから中庭とかやめよって…

「あの様子じゃ彼というより
　弟みたいかもだけど
　今は爪を隠してるだけで本来は
　野獣なんで大人のいい男に
　なるまで待っててあげて。」

「土田先生みたいになるって
　言ってます、いつも。」

「俺でいいの？
　将吉のなる男の目標。」

「楽しみにしてます。
　
　あの…先生は寺辻先生と仲良し
　なんですよね？」

「うん、仲いいよ。興味あるの？
　将吉とは真逆の位置にいるけど…
　たまには甘える側に行って
　みたいなんて気持ちなら俺に
　しといたほうがいいかな。
　甘えさせてあげるから。

　あいつの恋人になるにはね
　すげー愛さなくちゃ無理。
　あいつ以外のこと
　考えられないくらい溺れないと」

「怖いですね、それって。」
「うん、でも、あいつは
　自分から狩らないとだめだから。
　月先生なんで好きなタイプだと
　思うから気をつけてね。」

「気をつける？」
「そう、蜘蛛の巣にかかったら
　蝶々は逃れられないでしょ？

　将吉今が大事な時だから
　色々大変かもだけど、未来の名医
　そばで支えてやって。
　仕事にも彼女にも夢中だから。」
「はい、私も夢中です。」

将吉の女神は月先生か。
どうやって捕まえたのかな？
邪魔するなよ、ケンチ

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