両手に嘘を。3

99.人間の性、男の性《S》 ページ7

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いつもと同じように、いつもと同じコンビニに寄って

晩飯の弁当と、ビールを1本

そして買ったばかりのはずなのに既に無くなりかけたタバコを三つ購入して

自分のアパートへと足を向けた





ポケットをまさぐって、指先に触れたタバコの箱から

その1本を取り出して唇にくわえる




歩きタバコなんて決して生徒に見せられた姿じゃないけれど

口寂しい自分の欲求に負けて

教師という体面を捨てて、1人の人間に戻る瞬間がある




欲求は、押さえ込むほどに膨れ上がっていく




それをコントロールすることも必要だと思いながらも

最後には欲望に飲み込まれていっている




それが人間の性




そう言ってしまえば、正当化して片づけるのは簡単だけど

教師という職業柄、避けることが出来れば

避けて通りたい人間の性




そして、男の性




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ガサゴソとコンビニ袋を鳴らしながら、静かな夜の住宅街を歩いていく




自分の靴の踵の音がやけに反響して聞こえてきていて

いつもこんなにも静かだったのかと、不思議に思えるぐらいだった




時間はまだ7時過ぎ




今日に限って通り過ぎる車の影もない




大通りから一本抜けているこの住宅街は、普段から静と言えば確かに静かなのだけれども

今日はいつも以上に静寂しきっている気がしていた





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コツン、と踵の音がそこで止まる




路上から見上げた自分のアパートの部屋の灯りに

不意に、歩いていた足を止めていた




重い気持ちのため息が思わず落ちて

また、その足を進める





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部屋の中に誰かがいるのが分かっていながら

自分で鍵を出してそのドアを開けた




フラットなヒールの女物の靴が、遠慮さえもなく

当然のように玄関先に並んで置かれていた






翔「…………。」

「おかえりぃ。チャイム鳴らしたら鍵ぐらい開けたのに。」





どこから探り当てたのか、来客用のスリッパを大袈裟にパタパタと鳴らして

彼女は玄関に立ち尽くす俺の前に姿を現した





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